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とてもおもしろかった。時に笑えて、時にしんみりする「踊る大捜査線」らしい作品だったと思う。前作「3」は「踊る」の変化が大きく描かれた作品だったけど、今回は過去の「踊る」を踏襲した作りをしていた。もちろん、いかりや長介はいないし、青島は昇進したし、署長&副署長も退職したけど、それでも懐かしい雰囲気が出ていた。映像を見比べると全然違うんだけど、でも雰囲気が懐かしかった。

今だから思うのは、「踊る」は刑事ドラマではない形で警察機構を描いたことが新しかった。そして過剰なまでにネタを詰め込んだり、サブキャラを主人公にしたり、いくつもの事件を同時進行させるなど様々な実験を行った。結果からいえば、それらの手法は「踊る」以外では成立することができない、極めてマイナーな手法だということが、ここ数年でわかってきたと思う。そして「踊る」も、あれだけの出演者を勢揃いさせることがいかに困難なのかがわかった。

それらの実験に終わりが今回の「THE FINAL」という形になったのだと思う。

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おもしろかったのは、小栗旬が演じる鳥飼だった。前作「3」で、柳葉敏郎、筧利夫、真矢みきに続く新たな管理官として登場。当初は調整役としての新たな世代を象徴する穏和なキャラクターだったけど、最強犯罪者小泉今日子の一味に爆撃されてからは、『ダークナイト』のトゥーフェイスのような手段を選ばない犯罪処刑人に変貌。今回は登場しはじめから「これ映画の伏線じゃない?」と思わせるような暗黒っぷりな台詞を連発で、むしろいままで強敵として描かれていた管理官が小物に過ぎないと思えるほどの腹黒っぷり。いやまじで最高。ちなみに時折サングラスをかけてたけど、あれどういう設定なんだろ。

前作ではこの鳥飼に対して、青島は何も言葉をかけなかった。よくよく考えたら、あれは青島がはじめて「逃げた」瞬間だったかもしれない。今回は最後だから、きっと何か返事をすると思う。それが楽しみ。

ちなみに今回の「FINAL」は噓だと思う。というか、あれは亀山Pが打った大博打で、興行収入的に失敗した「3」を挽回するための景気付けのようなものだと思う。興行収入的に当たれば、たとえ次の作品で誰か主要キャラがいなくなったとしても「Reborn」とか銘打てばいくらでも作れると思う。ただ「3」以降の第2次「踊る大捜査線」体制は一度終わりなのだと思う。事実中西係長役の小林すすむも亡くなったわけで。正直、今のメンバーであと3本くらいやってほしかった。だけどそれはもう仕方ないから、金曜日に今回の最終回を観に行く。すみれさんがどうなるかがずっと気になってる。

どうでもいいけど、ちなみに自分は今は劇場版の中で一番「3」が好き。日本の映画の中であんなにあからさまにクリストファー・ノーランを意識した娯楽映画はないと思う。