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最近よく読んでいるアダチケイジ×森高夕次「グラゼニ」の6、7巻。

そもそもグラゼニとは「グラウンドから銭を掘り起こす」という、主人公(※凡田夏之介という人)の言葉からつけられたタイトル。プロの野球が題材でありながらチームプレイや勝負をメインに描かないマンガは多分はじめてだと思う。お金のことを中心に描かれるとはいえ、「あいつは金に汚い!」とかそういう人間模様が描かれるのではなくて、いろいろなレベルで役割を持った選手、野球関係者がいて、みんなこんな感じでそれぞれ頑張っていますみたいな気楽なノリで読めるのがいい。毎週、雑誌「モーニング」の中で楽しみにしているマンガの一つ。

主人公の凡田夏之介の年棒は1800万円の8年目の中継ぎ投手。一般サラリーマンと比較したらとても大きな所得だけど、野球選手の中ではそれほどでもない。それどころか引退後の給料が100万円になる選手もざらにいる世界かつ高税率を考えると多くはない。そして有名な野球選手になれるポテンシャルもない。だけどそういう選手がこの世界にはたくさんいて、みんなそれぞれ生活している。中継ぎから先発への転向、監督、高校時代、恋愛、チーム事情、引退後の先輩、2軍の後輩など野球選手の実情を丁寧に描いていて、いちいちそれがおもしろい。興味深いとも言えるけど、それよりも案外小さなことで選手が一喜一憂してるのを見ると、野球選手が雲の上の存在ではなく、案外みんなと同じなんだなーって思った。共感というにはおこがましいし、自分が安心するわけでもないけど(といいつつその面も否定できないけど)、なんていうかかわいらしい。

主に野球マンガって、大抵は題材が高校野球が中心で、なおかつ根性論が強く諭される傾向が強かったし、自分が今までに読んでおもしろいと思った森田まさのりの「ROOKIES」や真船一雄の「雷神」もある程度そうだと思う。映画「メジャーボール」シリーズもコメディとはいえ、根性論とかチーム信仰があった。だけど最近おもしろいひぐちアサの「おおきく振りかぶって」はどちらかというと科学的な手法の方が大きなウエイトを占めていて、「グラゼニ」もどちらかというとそういう作品だけど、さらに経済にも足を踏み入れているのが新しい。この先、どこまで描かれるのかが気になる。