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すごくおもしろかった。絵柄から誤解されるけど、これはダークファンタジーだから主人公は基本的にどんどん不幸になる作品。でも希望も描かれている。「新世紀エヴァンゲリオン」の完結編「Air/まごころを、君に」の公開から15年、そして新劇場版「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」から3年、庵野秀明が新劇場版を作る時の所信表明の「エヴァより新しいアニメはありませんでした」に答える作品がようやく生まれたと思う。

この物語の主人公のまどかは中学生くらいの女の子。その子は善意で人や友達を救おうとするたびに、それが裏目に出て苦しむ。そしていつも命を捨てる決意をするたびに、彼女を守るために戦い続ける友達に止められる。でも最後にその友達が止めきれなくなった時、そして主人公のまどかが命を捨ててでも本当に叶えたい願いを見つける。その時、受け身だった旧世紀版のエヴァが葬られたと思った。

少年や少女が命を捨ててでも世界を救う。個人的には認めたくないし、気持ち悪い。だけどその一方で、何かを失ったり絶望に打ち拉がれながら生きていても仕方がないと思うのも理解できるのね。それはきっと戦前の人が理不尽だとわかっていながらも戦場に向かった心境と大差ないと思う。何かを守るために命を捨てることが理解されるなら、それが家族や友人だけではなく、国や宗教といった概念も時には対象となりうるから。

まどかは過去からの犠牲者を救うために命を捨てました。まどかはその願いで自分も救われると言ったけど、彼女は消えてなくなった。友達はそのことには涙を流した。

ここで旧世紀版と新劇場版を含めたエヴァと結末を比較してみる。

・旧世紀版でシンジはすべてを知った上で、世界を肯定した。そして世界は一応救われた。
・新劇場版「破」でシンジはすべてを知らないまま、自分が死んででも世界が滅んでも、レイを救うことを願い、それを叶えた。
まどかはすべてを知った上で、自分が死んででも世界を救うことを願い、それを叶えた

いろいろ細かい部分につっこむ余地はあるけど、やっぱりまどかは凄い。本当なら女の子が命を捨てることを認めたくないけど、自分から命を捨ててでも叶えたい願いを見つけ、そしてそれを実現できる人はこの物語にはまどかしかいなかった。シンジの場合、一度世界を否定したり、世界を滅んででもレイを助けたりする。まどかはそれを思いとどまったわけで。

もちろん結論云々だけでこの作品が凄いわけではなく、演出の巧みなことや絵がきれいなことなど様々な要因がこの作品を社会現象に押し上げているけど、僕個人は途中からこの物語がどれだけエヴァの先に行くのかばかりを気にしながら見ていた。残念ながら完璧な結末ではなかったけど、でも劇場版にはそれを挽回する余地が描かれるみたい。

本当に素晴らしいアニメだった。可能な限り劇場版も追いかけようと思う。