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すごい映画だった。ずっと西川美和監督の映画はチェックしなければと思いつつも食指が動かなかった。でも今回、勇気を出して観てよかった。重くシリアスな映画なのは確かだけど、最後の最後で鮮やかな気持ちになれた。覚悟さえ決めれば観て後悔することはないと思う。

実は観るまでこの映画がサスペンス作品だということを知らなかった。だからオダギリジョーが演じる主人公のタケルが東京でカメラマンをしていて、女に不自由せず、兄の職場の昔の知り合いの真木よう子演じる女の子とすぐに寝て、おまけに法要で頭の固い父親と喧嘩する場面を観て、最初は一気に白けた。ステレオタイプな田舎映画だと思ってたら、真木よう子が吊り橋から落ちて死亡→退場。香川照之が演じる兄に容疑がかかり捜査→裁判。

そこからが混沌としつつ目が離せなくなった。兄は狂うわ、父は壊れるわ、弁護士の叔父がブチギレ、おまけに兄は噓や真実がごちゃごちゃで、弟悩みまくり。証言台に立たされた弟の一言で事件がひっくり返ることに。

個人的にこのあと映画版の「逆転裁判」を観ようと思っていたけど、それよりずっと重い逆転裁判を観てしまった気が... でもおもしろい。時折、ありきたりなシーンで涙を誘うシーンが個人的には3カ所くらいあって萎えたけど、映画館のお客への配慮だと思えばまあOK。サスペンスになってからが圧巻で、最初は「若い頃の真木よう子きれいだなー」くらいにしか思ってなかったけど、終盤は「香川最高!」「オダギリ、凄い」の連続。最後に「観た方のご想像におまかせします」的な余地が2つほど残されていたけど、でも自分は超がつくほど楽天家なので鮮やかな気持ちになった。

ただこの映画を見てテーマ的なものはあまり感じなかった。でもこの作品がただの娯楽作品としてして作られたとも思わない。物語があってそれを映像化した。ただそれだけのことなのかもしれない。それで映画が成立するという意味で、才能の塊のような映画だと思った。