新旧問わず今年読んだマンガの中からよく読んだものを選びました。元々数を読むタイプではないけど、それでもFellows!周辺の作品を好きになれたことは自分にとって大きなことでした。熱心なマンガファンの方からすれば「何を今更」のランキングだと思いますが、個人的な備忘録として記しておこうと思います。

がらくたストリート 1 (バーズコミックス)
大人顔負けの博識な小学生、孔子を引用する小学生、オタクな兄、宇宙人、神様など、属性がてんこ盛りにも関わらず物語には一切絡まない一話完結型の日常マンガ。これでもかと強烈なキャラが登場するにもかかわらず、この作品の中で一番おかしいのが主人公の男の子でした。設定的には普通だけど、超がつくほど素直。とにかくネタがふんだんに詰め込み、同時に1ページ先の展開も想像させない構成が凄すぎです。最初に読んだ時は一見凄くないのに読み応えがあることに驚きました。にもかかわらず、作者がホームページで「全然売れてない」と愚痴るのは、少々ネタがマイナーなのが原因だと思います(笑)すごく面白いけど薦める人に困るというか、そもそも自分だけで楽しんでいたい作品です。絵が抜群にうまく、展開が読めない作品を期待している漫画ファンにとってはたまらない作品なのは間違いないです。黒田硫黄の「茄子」に近いと思いました。
ちなみにこの作者は別名義で成年系でも書いてますが、そこでも成年向けでありながらストーリー的に唸らされる、ある意味「それってどうなの?」的なことをやらかしていました。

乱と灰色の世界 4巻 (ビームコミックス)
絵が素晴らしいです。今回、入江亜季さんの作品をきっかけにFellows!の作品を読み漁ったのですが、絵が素晴らしい作品が多く、自分の知っていた世界の狭さを痛感しました。今回取りあげた入江亜季さんと森薫さんに並ぶ絵を描く漫画家は尾田栄一郎しかいないと思います。彼らの共通点は外国とか西欧の景色を想像で、ある意味インチキに真似ていること、そしてひたすら空白を埋める傾向にあるということだと思います。それだけ描く力があるのだと思うし、そういう絵は本当に観ているだけで幸せです。

乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)
本当にコマが絵で埋まっていて、眺めているだけで幸せになります。本当に優れた絵のマンガ作品は、ストーリーや展開がゆるやかでもひたすら読ませてくれます。おそらくFellows!の刊行ペースが遅いことも作用していると思います。どこにスポットを当てても、森薫さんがそれを描ける力があるから、本当に好き勝手に描いている印象を受けます。装飾を丁寧に描いていて、マンガの魂は細部に宿るのだと思いました。

ウワガキ(4) (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
ラブコメです。ヒロインがひたすらかわいいことと、作者のぼやきを主人公が代弁することで笑えるマンガに仕上がっています。今年はラブコメ作品が多く輩出された一年でしたが、自分の中ではこの作品が一番おもしろかったです。でも雑誌がマイナーなだけあってメジャーではそれほど浸透してないように思えます。王道のストーリーに宇宙人や達観した妹、スパイ、天然の女性教師、天才などなどてんこ盛り盛りで読み応えあります。

グラゼニ(7) (モーニング KC)
2位から4位まで絵を重視した作品が多かったのに対し、こちらはストーリー重視、というかネタ重視の作品です。最終的に小さな笑いに落とし込むセンスに惹かれました。野球選手だけど読者に対して敬語で話しかけ、小さいことで一喜一憂する姿がおもしろいです。みんな同じだなーと思いました。

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)
ジャンプの漫画では「暗殺教室」が良かったです。元々松井優征の作品が好きだったけど、その期待を1mmも裏切らなかった作品です。人を殺すことをテーマにしながら日常感がある点が、「デスノート」よりも現代的だと思います。20巻ぐらいまで続いて欲しいです。

アバンチュリエ(4) (イブニングKC)
モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」をマンガ化した作品です。原作忠実度が一貫して高く、遊びがない作品だと思います。だからこそルブランのルパンを本質的に捉えていて、小学生の頃に理解できなかったルパンを堪能できて個人的にはうれしかったです。現在4巻まで出ているけど、5巻で打ち切りということが既にアナウンスされていて、作者は移籍先を探しています。面白い作品だけに続いて欲しいです。

Forget-me-not (1)
鶴田謙二の「フォゲットミーナット」に関しては「好きだから」としか言いようがないです。今連載中の「冒険エレキテ島」も同様です。ガサツな美人の女性は夢なのかもしれないと、いまふと思いました。

中国嫁日記 (二)
今更だけど「中国嫁日記」も良かったです。そういえば安野モヨコの「監督不行届」やけらえいこの「セキララ」シリーズも好きですね。

めだかボックス 17 (ジャンプコミックス)
「めだかボックス」は一気にハマりました。活字を含めて西尾維新作品が好きになったのははじめてだけど、設定とか世界観が好きになったことは今回を含めて一度もないです。キャラだけです。球磨川、半袖ちゃんが好きです。はるかぜちゃんのおかげでこの漫画が好きになりました。

ヨルムンガンド 10 (サンデーGXコミックス)
高橋慶太郎の作品は「ヨルムガンド」の他にも、「デストロ246」もおもしろかったです。シリアスに見られそうだけど、実は頭が空っぽでも全然読める気持ち良さがあるのがこの作者の作品のいいところだと思います。熱心なファンならキャラについたりするのだろうけど、僕に関してはいろいろな属性のキャラを適当に配置する作者の乱暴さに惹かれました。「ヨルムガンド」は主人公というかヒロインが抜群に良かったですね。

シャーマンキングFLOWERS 1 (ヤングジャンプコミックス)
「シャーマンキングflowers」は確実に「シャーマンキング」よりおもしろくなる作品なのでファンは必見です。息子が主人公になった作品は前作越えを果たせないのが常ですが、「シャーマンキング」に関しては前作の主人公が特殊すぎるゆえに、今作の主人公がうまく機能しています。前作でキャラが死んでも生き返るのが普通なチート漫画にも関わらず、異常なほどに読ませてくれます。ジャンプ改の二代看板として長く、最低でもコミックス20巻分は続いて欲しいけど、その結果武井先生が死ぬような気もするので、のんびりでいいです。手を変え品を変え一生続けてください。

軍靴のバルツァー 3 (バンチコミックス)
中世のヨーロッパ的な世界の戦争マンガです。戦争に関するエリート軍人が、ある国の軍事養成校で教官として生徒を指導する物語です。それと同時にとある王国の派閥争いのようなものにも巻き込まれ、いろいろ奔走するのですが、その謀略モノ、そして学園モノ、戦争モノの要素がうまく混ざり合って読み安いのが良かったです。多分、本来的には情報量が多い作品なのでしょうが、それを感じさせないところが良いです。ちなみに今月ジャンプ改で連載がはじまった長崎尚志原作の「ヤマテラス・コード」もおもしろそうです。ジャンプ改は地味に好きな漫画が多いです。

限界集落温泉(3) (ビームコミックス)
いわゆる外部の人間が潰れかかっている温泉をあの手この手を使って盛り上げる物語です。それがいちいち現実に即しているというか、素人でも考えつきそうなことをいちいち試して、それがうまくいったりだめになったりを描いているのですが、それらが過剰に盛り上がらないところがいいです。鈴木みその作品に関してはホリエモンが前から「銭」を絶賛していたので気になっていたのですが、僕はこっちの「限界集落温泉」の方が好きでした。

煩悩寺 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
草食SEとサバサバしたOLの恋愛マンガです。作者の秋枝さんの他の作品は読んでいないのですが、おそらく属性的にはオタクかつ変人、なおかつ基本的に一人でいるのが好きな人なのだと思いました。そういう方の恋愛観をストレートにマンガ化したらこうなったというタイプの作品で、好き嫌いは分かれるもののハマればとても心地よいと思います。基本的に二人とも恋愛に対してがっつかず、変なことに対して笑い合っていて、なおかつ恋愛のストレスが描かれていないので、もうこれはただの願望、もしくは実体験としか思えないです。でも好きです。

SKET DANCE 28 (ジャンプコミックス)
今年はじめて読んだというわけではないのですが、今年掲載された「スイッチ・オン」シリーズが凄かったので取りあげました。主要キャラである笛吹の過去の話で、彼が傷つき、そしてそこから立ち上がる話が描かれています。巻数でいうと27〜28巻です。とある事件が起こり、その犯人が学校裏サイトに使って悪を粛正するという題材が、この作品がフィクションであるにもかかわらず「ありえるかも」と思わせるところに唸らされたし、そこで犯人を突き止め救い出そうとする主人公の瞬発力を、作者は凄まじいテンションで描いています。本来的にはゆるゆるのマンガなのですけど、今回ばかりは読むほどにテンションがあがりました。日常系マンガでもここまでの作品が作れることを証明したシリーズだったと思います。

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)
再び入江亜希の作品を選びました。「群青学舎」の方も読みましたが、こちらを入れました。「乱と灰色の世界」が現代日本を題材にした魔法ファンタジーなのに対し、これは西欧のような世界の物語です。森薫さんの「エマ」もそうですけど、基本的にこのお二方に限らず、僕ら日本人には西欧に対する憧れがあって、このお二方はそういう世界観を描くのが基本的に得意なのだと思います。だからこそ今は敢えてその得意な舞台が敢えて登場しない作品を書いているのですが、これはそういうことを考える以前の、ただひたすら好きに書いていた時期の作品なのだと思います。無邪気だし、盛り上げ的には稚拙だけど、入江亜季さんの作品が持つ「ここではないどこかを描く」成分がふんだんに含まれていて、ひたすら楽しいです。何度も読んでいます。

prism (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)
非エロですがジャンルが百合なので番外編として選出しました。作者の東山翔さんは成年系で活躍するガチエロの作家で、成年系には勿体ない(と書くとそちら側の人に怒られるのはわかっているのですが)くらい絵が上手な方です。同時にジャズのミュージシャンとしても活動しているとのことで、作品にジャズのタイトルを付けるという、美意識の高い、悪く言うと気取ったエロマンガ家です。その彼が非エロでレズものを描いているのですが、これがびっくりするくらいの良作なのです(と力説しつつ、この記事の読者が女性だったらどう感じるのか不安ですが....)。レズものというと、基本的にはマイノリティーに属する人の恋愛なのだけど、だからといってシリアスなわけではないし、そもそも自分たちがガチなレズビアンなのかすら自覚していない女子高校生が、とにかく目の前の女の子を好きになるという話。深刻過ぎではないけど、かといって笑わせようとしているわけでもなく、とにかく見届けたくなるタイプの作品です。ちなみに理解のある大人や同級生が登場するところが、なんていうか成年系出身っぽいなあと思います。マイノリティーになるエピソードを飛ばすための装置というか。
1. 山田穣「がらくたストリート」

がらくたストリート 1 (バーズコミックス)
大人顔負けの博識な小学生、孔子を引用する小学生、オタクな兄、宇宙人、神様など、属性がてんこ盛りにも関わらず物語には一切絡まない一話完結型の日常マンガ。これでもかと強烈なキャラが登場するにもかかわらず、この作品の中で一番おかしいのが主人公の男の子でした。設定的には普通だけど、超がつくほど素直。とにかくネタがふんだんに詰め込み、同時に1ページ先の展開も想像させない構成が凄すぎです。最初に読んだ時は一見凄くないのに読み応えがあることに驚きました。にもかかわらず、作者がホームページで「全然売れてない」と愚痴るのは、少々ネタがマイナーなのが原因だと思います(笑)すごく面白いけど薦める人に困るというか、そもそも自分だけで楽しんでいたい作品です。絵が抜群にうまく、展開が読めない作品を期待している漫画ファンにとってはたまらない作品なのは間違いないです。黒田硫黄の「茄子」に近いと思いました。
ちなみにこの作者は別名義で成年系でも書いてますが、そこでも成年向けでありながらストーリー的に唸らされる、ある意味「それってどうなの?」的なことをやらかしていました。
2. 入江亜季「乱と灰色の世界」

乱と灰色の世界 4巻 (ビームコミックス)
絵が素晴らしいです。今回、入江亜季さんの作品をきっかけにFellows!の作品を読み漁ったのですが、絵が素晴らしい作品が多く、自分の知っていた世界の狭さを痛感しました。今回取りあげた入江亜季さんと森薫さんに並ぶ絵を描く漫画家は尾田栄一郎しかいないと思います。彼らの共通点は外国とか西欧の景色を想像で、ある意味インチキに真似ていること、そしてひたすら空白を埋める傾向にあるということだと思います。それだけ描く力があるのだと思うし、そういう絵は本当に観ているだけで幸せです。
3. 森薫「乙嫁語り」

乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)
本当にコマが絵で埋まっていて、眺めているだけで幸せになります。本当に優れた絵のマンガ作品は、ストーリーや展開がゆるやかでもひたすら読ませてくれます。おそらくFellows!の刊行ペースが遅いことも作用していると思います。どこにスポットを当てても、森薫さんがそれを描ける力があるから、本当に好き勝手に描いている印象を受けます。装飾を丁寧に描いていて、マンガの魂は細部に宿るのだと思いました。
4. 八十八良「ウワガキ」

ウワガキ(4) (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
ラブコメです。ヒロインがひたすらかわいいことと、作者のぼやきを主人公が代弁することで笑えるマンガに仕上がっています。今年はラブコメ作品が多く輩出された一年でしたが、自分の中ではこの作品が一番おもしろかったです。でも雑誌がマイナーなだけあってメジャーではそれほど浸透してないように思えます。王道のストーリーに宇宙人や達観した妹、スパイ、天然の女性教師、天才などなどてんこ盛り盛りで読み応えあります。
5. 森高夕次 × アダチケイジ「グラゼニ」

グラゼニ(7) (モーニング KC)
2位から4位まで絵を重視した作品が多かったのに対し、こちらはストーリー重視、というかネタ重視の作品です。最終的に小さな笑いに落とし込むセンスに惹かれました。野球選手だけど読者に対して敬語で話しかけ、小さいことで一喜一憂する姿がおもしろいです。みんな同じだなーと思いました。
6. 松井優征「暗殺教室」

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)
ジャンプの漫画では「暗殺教室」が良かったです。元々松井優征の作品が好きだったけど、その期待を1mmも裏切らなかった作品です。人を殺すことをテーマにしながら日常感がある点が、「デスノート」よりも現代的だと思います。20巻ぐらいまで続いて欲しいです。
7. 森田崇「アバンチュリエ 新訳アルセーヌ・ルパン」

アバンチュリエ(4) (イブニングKC)
モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」をマンガ化した作品です。原作忠実度が一貫して高く、遊びがない作品だと思います。だからこそルブランのルパンを本質的に捉えていて、小学生の頃に理解できなかったルパンを堪能できて個人的にはうれしかったです。現在4巻まで出ているけど、5巻で打ち切りということが既にアナウンスされていて、作者は移籍先を探しています。面白い作品だけに続いて欲しいです。
8. 鶴田謙二「フォゲットミーナット」

Forget-me-not (1)
鶴田謙二の「フォゲットミーナット」に関しては「好きだから」としか言いようがないです。今連載中の「冒険エレキテ島」も同様です。ガサツな美人の女性は夢なのかもしれないと、いまふと思いました。
9. 井上純一「中国嫁日記」

中国嫁日記 (二)
今更だけど「中国嫁日記」も良かったです。そういえば安野モヨコの「監督不行届」やけらえいこの「セキララ」シリーズも好きですね。
10. 西尾維新×暁月あきら「めだかボックス」

めだかボックス 17 (ジャンプコミックス)
「めだかボックス」は一気にハマりました。活字を含めて西尾維新作品が好きになったのははじめてだけど、設定とか世界観が好きになったことは今回を含めて一度もないです。キャラだけです。球磨川、半袖ちゃんが好きです。はるかぜちゃんのおかげでこの漫画が好きになりました。
備忘録なので他にも良かった漫画を挙げておきます。
高橋慶太郎「ヨルムンガンド」

ヨルムンガンド 10 (サンデーGXコミックス)
高橋慶太郎の作品は「ヨルムガンド」の他にも、「デストロ246」もおもしろかったです。シリアスに見られそうだけど、実は頭が空っぽでも全然読める気持ち良さがあるのがこの作者の作品のいいところだと思います。熱心なファンならキャラについたりするのだろうけど、僕に関してはいろいろな属性のキャラを適当に配置する作者の乱暴さに惹かれました。「ヨルムガンド」は主人公というかヒロインが抜群に良かったですね。
武井宏之「シャーマンキングflowers」

シャーマンキングFLOWERS 1 (ヤングジャンプコミックス)
「シャーマンキングflowers」は確実に「シャーマンキング」よりおもしろくなる作品なのでファンは必見です。息子が主人公になった作品は前作越えを果たせないのが常ですが、「シャーマンキング」に関しては前作の主人公が特殊すぎるゆえに、今作の主人公がうまく機能しています。前作でキャラが死んでも生き返るのが普通なチート漫画にも関わらず、異常なほどに読ませてくれます。ジャンプ改の二代看板として長く、最低でもコミックス20巻分は続いて欲しいけど、その結果武井先生が死ぬような気もするので、のんびりでいいです。手を変え品を変え一生続けてください。
中島三千恒「軍靴のバルツァー」

軍靴のバルツァー 3 (バンチコミックス)
中世のヨーロッパ的な世界の戦争マンガです。戦争に関するエリート軍人が、ある国の軍事養成校で教官として生徒を指導する物語です。それと同時にとある王国の派閥争いのようなものにも巻き込まれ、いろいろ奔走するのですが、その謀略モノ、そして学園モノ、戦争モノの要素がうまく混ざり合って読み安いのが良かったです。多分、本来的には情報量が多い作品なのでしょうが、それを感じさせないところが良いです。ちなみに今月ジャンプ改で連載がはじまった長崎尚志原作の「ヤマテラス・コード」もおもしろそうです。ジャンプ改は地味に好きな漫画が多いです。
鈴木みそ『限界集落温泉』

限界集落温泉(3) (ビームコミックス)
いわゆる外部の人間が潰れかかっている温泉をあの手この手を使って盛り上げる物語です。それがいちいち現実に即しているというか、素人でも考えつきそうなことをいちいち試して、それがうまくいったりだめになったりを描いているのですが、それらが過剰に盛り上がらないところがいいです。鈴木みその作品に関してはホリエモンが前から「銭」を絶賛していたので気になっていたのですが、僕はこっちの「限界集落温泉」の方が好きでした。
秋枝「煩悩寺」

煩悩寺 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
草食SEとサバサバしたOLの恋愛マンガです。作者の秋枝さんの他の作品は読んでいないのですが、おそらく属性的にはオタクかつ変人、なおかつ基本的に一人でいるのが好きな人なのだと思いました。そういう方の恋愛観をストレートにマンガ化したらこうなったというタイプの作品で、好き嫌いは分かれるもののハマればとても心地よいと思います。基本的に二人とも恋愛に対してがっつかず、変なことに対して笑い合っていて、なおかつ恋愛のストレスが描かれていないので、もうこれはただの願望、もしくは実体験としか思えないです。でも好きです。
篠原健太「SKET DANCE」

SKET DANCE 28 (ジャンプコミックス)
今年はじめて読んだというわけではないのですが、今年掲載された「スイッチ・オン」シリーズが凄かったので取りあげました。主要キャラである笛吹の過去の話で、彼が傷つき、そしてそこから立ち上がる話が描かれています。巻数でいうと27〜28巻です。とある事件が起こり、その犯人が学校裏サイトに使って悪を粛正するという題材が、この作品がフィクションであるにもかかわらず「ありえるかも」と思わせるところに唸らされたし、そこで犯人を突き止め救い出そうとする主人公の瞬発力を、作者は凄まじいテンションで描いています。本来的にはゆるゆるのマンガなのですけど、今回ばかりは読むほどにテンションがあがりました。日常系マンガでもここまでの作品が作れることを証明したシリーズだったと思います。
入江亜季「コダマの谷 - 王立大学騒乱劇」

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)
再び入江亜希の作品を選びました。「群青学舎」の方も読みましたが、こちらを入れました。「乱と灰色の世界」が現代日本を題材にした魔法ファンタジーなのに対し、これは西欧のような世界の物語です。森薫さんの「エマ」もそうですけど、基本的にこのお二方に限らず、僕ら日本人には西欧に対する憧れがあって、このお二方はそういう世界観を描くのが基本的に得意なのだと思います。だからこそ今は敢えてその得意な舞台が敢えて登場しない作品を書いているのですが、これはそういうことを考える以前の、ただひたすら好きに書いていた時期の作品なのだと思います。無邪気だし、盛り上げ的には稚拙だけど、入江亜季さんの作品が持つ「ここではないどこかを描く」成分がふんだんに含まれていて、ひたすら楽しいです。何度も読んでいます。
あと番外編としてこれを挙げておきます。非エロですが多分男性向けです。というか百合。
番外編 : 東山翔「Prism」

prism (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)
非エロですがジャンルが百合なので番外編として選出しました。作者の東山翔さんは成年系で活躍するガチエロの作家で、成年系には勿体ない(と書くとそちら側の人に怒られるのはわかっているのですが)くらい絵が上手な方です。同時にジャズのミュージシャンとしても活動しているとのことで、作品にジャズのタイトルを付けるという、美意識の高い、悪く言うと気取ったエロマンガ家です。その彼が非エロでレズものを描いているのですが、これがびっくりするくらいの良作なのです(と力説しつつ、この記事の読者が女性だったらどう感じるのか不安ですが....)。レズものというと、基本的にはマイノリティーに属する人の恋愛なのだけど、だからといってシリアスなわけではないし、そもそも自分たちがガチなレズビアンなのかすら自覚していない女子高校生が、とにかく目の前の女の子を好きになるという話。深刻過ぎではないけど、かといって笑わせようとしているわけでもなく、とにかく見届けたくなるタイプの作品です。ちなみに理解のある大人や同級生が登場するところが、なんていうか成年系出身っぽいなあと思います。マイノリティーになるエピソードを飛ばすための装置というか。
来年もいろいろ読みたい、というか自然に読んでしまうんだろうなーと思います。
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