
さらば雑司ヶ谷 (新潮文庫)
クソおもしろい小説です。ですが樋口毅宏作品を未読の方は「日本のセックス」や「雑司ヶ谷R.I.P.」はさらにおもしろいので覚悟した方がいいです。
最初に読んだ時はTVシリーズの方の「池袋ウェストゲートパーク」みたいな作品だと思いました。設定は違うけど途中までは結構似ています。「そういうシリーズなのかー」と思っていたら脳みそが一気に飛び散るほどの衝撃を受けます。性的嗜好がぶっとんど強敵が登場し、ヒロインは汚されまくり、当の主人公も墜ちまくっていることが判明します。もし読み進めるうちにそういう指向が自分の中にあることを否定できなくなったら最後です。
「こいつは俺と違う」
大体の人は99%そう思いながら読むでしょうし、実際僕自身もそうだったと思いますが、残りの1%にそういう可能性があることを否定できない人は、困ったことに樋口毅宏作品の虜になると思います。要はエロ&バイオレンス方面に関して、1%でも楽しめれば合格というか、人間的には失格の烙印が押されます。でもこの作品が楽しめるのだから悪くないです。
「こいつの気持ちは理解できるけど、こいつ実は嫌なやつだよね」というところが、村上春樹の作品の偉大なところだと僕は思っています。普通の作品の主人公は「こいつの気持ちは理解できるし、この人いいやつだよね」止まりだからです。作者の樋口毅宏さんは村上春樹のファン(もしくはファンだった)とのことですが、困ったことにこの作品の場合、「こいつの気持ちは理解できるけど、誰が観てもこいつ悪人だよね」というK点越えを果たしています。にもかかわらず主人公の気持ちが理解できるのは、自分も実は困った奴なのか。自問自答しながらぶっ飛ばされると楽しいです。(★6)
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