「けいおん！」の山田尚子監督、京都アニメーション制作の完全オリジナルアニメ作品です。シリーズ構成に吉田玲子、キャラクターデザインに堀口悠紀子など「けいおん！」のスタッフが参加しています。個人的には羽海野チカの「3月のライオン」の和菓子屋の要素、石黒正数の「それでも町は廻っている」の商店街の要素、そして山田尚子監督及び製作陣の前作「けいおん！」の雰囲気が合わさった作品だと思いました。まあ、それになぜか喋る鳥がプラスされてるけど、大体はそんな感じです。正直、超おもしろいです。

　びっくりするくらいネガティブな面がない作品です。例えば「3月のライオン」に登場する姉妹達は普段はみんな笑顔だけど、実は母親や祖母を失ったこと父親が家を出て行ったことが物語に影を射しています。「それでも町は廻っている」では商店街が少しずつ滅んでいく様子が描かれています。だけどまだ第一話の段階とはいえ、「たまこまーけっと」にはそういう気配がありません。母親が若くして亡くなった的なことがひっそり言及されていたけど、それが物語に影を射す感じもしません。超楽しいです。

　大きな不幸がなくても楽しいし、たとえ不幸な過去があっても楽しい。それを物語にできるのがすごいです。もう僕たちは悲しい物語に飽きているからこそ、「けいおん！」や「たまこまーけっと」のような突然変異が生まれたのかなと思いました。どちらにせよ表現としてすごい高次な作品だと思います。

　この先の展開、ベタな予想をすると、王子なる人物が登場してたまこをめぐってもち蔵と火花を散らしたり、もしくは不況の波が商店街に襲いかかったり、もしくはまだ明かされていないたまこの母について語られたりなどどの方向にも描けそうです。全12話とのことですが、オリジナル作品だから反響次第では次のシリーズを考えていると思います。個人的には少し長いタームで見たい作品なので応援していきたいです。家族で見ることができるアニメだと思います。（★8）