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清 竜人5thアルバム「KIYOSHI RYUJIN」+ライブチケットのセット: |EMI Music Japan Shop

 清竜人の5thアルバムです。全編弾き語りのアルバムです。CD単体では販売されず、全国ツアー「KIYOSHI RYUJIN TOUR」のチケットとセットでリリースされました。「ぼくはロリータ・コンプレックス」「ぼくとソープランド」「ぼくはアルツハイマー」といった過激な題材の曲が収録されてします。

 たとえば文学においては娼婦に恋して駆け落ちする話は江戸時代だと割とメジャーな題材だったし、現代においても過激なセックス描写のある小説なんか割とあります。清竜人のこのアルバムは表現的には過激だからライブチケット付きの限定販売にしたのだと思うし、それはそれで一つの正解だと思います。基本的にはとてもナイーブで優しい曲が揃ったアルバムだと思います。エッチな言葉は並ぶけど、エッチな作品ではないです。

 「ぼくとソープランド」という曲があります。「ぼく」がソープランドで中学生の頃に大好きだったあの子に会いに行く歌です。そこで行われることが淡々と、「ぼく」の視点から歌われます。題材は過激だけど音に扇情的な要素は一切無く、弾き語りのおしゃれなポップソングに聴こえます。そこで彼は「お互いにさ この今日まで なにがあったなんて知らんけど そんなことどうだっていい」と歌い、「じゃあ元気でまた来るよ とても良かったよ」と言って、帰ります。

 普通に考えたらそこに愛とか憎しみとか悲しみが含まれると思うのですが、清竜人はまるでおとぎ話のように軽やかに歌います。そこに憎しみや苦しみは一切ありません。喜怒哀楽の怒と哀が欠落したような曲だと思います。これは明らかに異常だけど、困ったことに曲を聴いていると「そういうものなのか」と納得してしまいます。ここに笑いの要素はありません。自分に対する皮肉もありません。まるでこの世界でのありふれた出来事のように描いています。

 でもすべてを丁寧かつ軽やかに描いて何が悪いのか?ということです。

 ソープランドからはじまる愛もあるし、はじまらない愛もあるし、それを歌にしてもいいのだと思います。多分、表現の過激さ以前にひいてしまう人がいることを配慮してこういう販売形式にしたのだと思います。誰よりも自由で、痛快でした。(★8)