The Sent 2
青いパパイヤの香り [DVD]

 トラン・アン・ユン監督が映画化した村上春樹原作の「ノルウェイの森」が想像していたよりもずっと良かったのでこの作品も観てみました。トラン・アン・ユン監督はベトナムで生まれ、ベトナム戦争から逃れるために両親とともに12歳の時にフランスに移住しました。

 この作品は1951年のベトナムのサイゴン(現・ホーチミン市)を舞台に、10歳の娘ムイが田舎から奉公するためにとサイゴンのとある一家にやってくる物語です。説明が少なく音楽もほとんど流れないずに、ムイの奉公先での生活が描かれます。物語と呼べるような筋が無いまま、ただただベトナムの一つの家の日常が描かれるのですが、どうも暗い雰囲気がこの家には漂っています。ムイは長年この家に仕えている年寄りの女中ティー(グエン・アン・ホア)にこの家の一人娘トーが父の家でしている間に病死してしまったこと、それでも愚痴一つ言わない母について聞かされます。そしてある日、一家の父は家の有り金を全部持って出て行き、祖母は母の至らなさを責め、それを次男のラムが見ています。

 正直、最初の50分はきつかったです。展開もよくわからず、物語に大きな動きもありません。しかし後半一家にある出来事が起こり、その後10年後のムイが描かれるのですが、そこからは目が離せなくなりました。このあたりからこの監督の描き方に馴れてきたのもあるのですが、主人公のムイが美しく成長し10年経っても女中として懸命に働いている姿が見ていておもしろいです。テキパキしていて清々しいです。

 「ノルウェイの森」もそうだったのですが、トラン・アン・ユン監督はある程度緩慢で耽美的な絵作りをするのが特徴ですが、それに加えてあまりに説明が無いことに最初は戸惑いました。でも映画が主人公であるムイにスポットを当てるようになってからは、最初は受け付けなかった暗い雰囲気も、把握しにくい一家の関係性も、すべてが最後の場面のためにあったのだと思いました。不思議な映画なのですが、良かったです。そういう凡庸な感想しか書けないのですが。(★9)