2012-10-22-good_day_to_die_hard_header
 僕のような20代男が「ダイ・ハード」の新作を公開初日にわざわざ観に行くというのは、お祭りだからです。そりゃあ日本では大きなヒットは見込めないし、「ダイ・ハード」の観客層はどう考えても10代・20代というよりも、今の40代や50代、もしかしたらそれより上の層がメインです。だからいくら僕が「ダイ・ハード」が好きだからといってこのブログで力を入れてレビューする意味があるのか自分でも疑問だけど、それでも書きたいものだから書くのです。

 ちなみに自分は多くの「ダイ・ハード」ファン同様、やはり「1」が最高傑作だと思っています。でも実は「4.0」も好きで、「1>>>4>2>>>3」という感じです。今作に関しては「1」を超えることはないけど「4.0」を超えるかが個人的な関心の一つでした。

 それで観ました。動揺を隠せないというのが正直なところです。

「これはダイ・ハードなのか?」

 まだ観ていない方が多いのでネタバレは控えますが、冒頭で「ダイ・ハード」らしくない展開を予感させるシリアスな場面になった時点で「これは期待できない」と思いました。別に映画としては少しもおかしくない、お客に少しだけ謎めいた要素を与えつつ物語に引き込むようなシーンです。ですが「ダイ・ハード」は話は別です。「ダイ・ハード」はジョン・マクレーンという刑事が世間の幸福に対して己の不幸をぼやく哀しみがいいのです。だから周りの世界がはなっからシリアスな時点で「2」以前のシリーズが帰ってこないことを悟りました。

 他にもいろいろ文句があります。舞台がアメリカではなくロシアだし、「4.0」で馴れていたはずなのにスキンヘッドのブルースは怖すぎる。今回相棒役として登場する息子のジャック(ジェイ・コートニー)はいつのまにか父親そっくりの男臭い青年になっているし(演技はすごく良かった)、おまけにアクションの規模が無駄に大きすぎでした。

 そして上映中に、その不満が覆ることはありませんでした。堪能はしました。ハリウッドでしかできない最高レベルのアクション映画だったと思います。もちろんアクション映画ならではの脚本の穴とか設定の無茶とはありましたけど、これがスタローンの「エクスペンダブルズ」とか、ジェイソン・ステイサムの新作映画だと思えばなんてことはないです。「ミッション・イン・ポッシブル」や007の新作でも許します。ですがこの作品は「ダイ・ハード」の新作なのです。ブルース・ウィリスが不幸な中年刑事がなぜか事件に巻き込まれる作品でなければいけないのです。そういう意味において僕は満足することはありませんでした。

「間違いなくダイ・ハードの新作だった」

 ところが上映後30分くらい経ってから、どうも「おもしろかった」と思っている自分がいるのです。そして印象に残ったシーンを頭の中で反芻してみると「あの映画は紛うこと無くダイ・ハードの新作だった」という結論に至るのです。ジョン・マクレーンが一番魅力的な場面が「1」と重なるからです。後先のことを考えずに頭に血が上って敵を攻撃してしまう時に表れる鬼のような顔、あれは間違いなくマクレーンであり、僕が大好きな「ダイ・ハード」でした。

 そう思ってからこの「ラスト・デイ」には「1」へのオマージュがふんだんに盛り込まれていたことに気づきました。「1」を思い出させるような仕掛けが僕が気づいただけで4つはありました。あと昔の音楽について話す場面もありました。どうも「ラスト・デイ」の物語の大筋に「ダイ・ハード」らしさはあまり感じなかったのですが、細かい要素をひとつひとつ拾い上げて行くとやはり「あの映画は間違いなくダイ・ハードの新作だった」という結論になるのです。

「A Good Day to Die Hard」

 最初はお布施を払うくらいの気持ちで映画館に観に行ったのですが、今だともう一回くらい観に行きたいと思う自分がいます。正直「おもしろい」と「最悪だった」という相反する気持ちが僕の中で渦巻いているのですが、そういうことを含めて「ダイ・ハード」の新作を堪能しました。やっぱりブルース・ウィルスは素晴らしい俳優だし、ジョン・マクレーンというのはとても魅力的なキャラクターだし、アメリカのアクション映画は世界最高だと思います。

 1988年の第一作から25年が経過し、911で本当のテロの脅威に晒されてから、僕が大好きな脳天気なアメリカの姿はなくなってしまいました。だから「ダイ・ハード」の新作が第一作を超えることはもうないと思います。ただそれでも鬼のような顔をするブルースの姿が数年に一度観れるというのは自分にとってとても幸せなことです。現時点での評価は「1>>>4.0=ラスト・デイ>2>>>3」という感じです。インタビューで語られていた「バハマ島を救え!」的な続編、実現して欲しいです。(★7)