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おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]

 なんとしても映画館で観るべき作品でした。

 自分は細田守監督の映画は「サマーウォーズ」しか観ていません。映画館とTV上映の2回、観るたびにそれなりに楽しい映画だと思うし、泣きそうになったこともあるのですが、総じて苦手な印象が強かったです。「高校生が好きな女の子の実家で過ごす夏休み」と、「インターネット上の仮想現実OZの大混乱」という2つの筋の結びつきがいくぶん強引に思えたからです。「いやいやこんなのフィクションだから手法的に強引だろうがおもしろければいいんだよ!」というツッコミを自分にも投げかけましたが、要はその無理な物語に対する冷めた目線を上回るおもしろさを得られなかったという話です。

 誤解を招いたら嫌なのでもう一度書きますが、「サマーウォーズ」はおもしろいです。でも僕の本心をいうなら「好きな先輩の実家で大家族に囲まれながら過ごす夏休み」というテーマだけで勝負して欲しかったのです。

 で、おそらく「おおかみこどもの雨と雪」がそのような攻めの姿勢で臨んだ映画なのだということは観る前からわかっていました。

映画「おおかみこどもの雨と雪」- ストーリー
大学生の花(宮﨑あおい)は、彼(大沢たかお)と出会ってすぐに恋に落ちた。やがて彼が人間の姿で暮らす"おおかみおとこ"だと知ることになったが、花の気持ちが変わることはなかった。そして一緒に暮らし始めた2人の間に、新たな命が生まれる。雪の日に生まれた姉は≪雪≫、雨の日に生まれた弟は≪雨≫と名づけられた。
雪は活発で好奇心旺盛。雨はひ弱で臆病。一見ごく普通の家族だが、生まれてきた子供たちは、「人間とおおかみ」のふたつの顔を持つ、≪おおかみこども≫だった。そのことを隠しながら、家族4人は都会の片隅でひっそりと暮らし始める。つつましくも幸せな毎日。しかし永遠に続くと思われた日々は、父である"おおかみおとこ"の死によって突然奪われてしまった―――
取り残された花は、打ちひしがれながらも「2人をちゃんと育てる」と心に誓う。そして子供たちが将来「人間か、おおかみか」どちらでも選べるように、都会の人の目を離れて、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎町に移り住むことを決意した。

 にもかかわらず当時、僕はこの映画をスルーしました。

 そしてようやく観たのですが、素晴らしかったです。この映画は「周囲に存在を知らせるわけにいかない子供を育てる母親の話」だけで勝負して、圧倒的な勝利を収めた映画だと思います。

 もちろん「おおかみおとことの子供を生み、育てる」というフィクション的な余地も残されていますが、「サマーウォーズ」における「インターネット上の仮想現実OZの大混乱」のような大きな仕掛けはありません。どんなにリアリティがあったところでフィクションなのは変わりないのですが、それでも自分は「花のように子供を育てる」という可能性を想像せずに観ずにはいられませんでした。まあ自分は男なので要は自分の親にさえ周知できない子供を一人で育てなければいけない状況についてですけど。

 だから主人公の花が都会に住んでいた当時、子供に予防注射を打たせてあげられなくて職員から訪問を受ける場面を観た時はあまりに怖すぎて凍り付きました。他にも理由があったとはいえ、花が出来る限り人と関わりを持たないために田舎に引っ越すことを思いつくことはごく自然だと思いました。この映画は本当に頷きながら観てしまう場面が多かったです。

 もちろん困った場面ではなく、楽しい場面についても何度も頷きながら観ました。家族3人が雪に飛び込む場面、徐々に野生に馴染みはじめていた雨が草原を駆け巡る場面は本当に素晴らしかったです。台詞抜きのダイナミックな映像だけで感動させられるアニメ監督が宮崎駿の他にもいたことに驚きました。

 「サマーウォーズ」における「インターネット上の仮想現実OZの大混乱」のような大きな仕掛けを用いること無く、淡々と家族を描き、そして一切だれさせること無くずっとお客を楽しませ続けることができる本物の傑作映画だと思います。つくづく2012年にこれをチェックしなかった自分を呪いましたが、今になってでも観れてよかったです。こんなふうに書いておいてなんですけど、次回作は派手目なものを期待しています。(★9)


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宮崎あおい,大沢たかお,菅原文太,細田守

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