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Color The Cover

 倖田來未がhideの「ピンクスパイダー」や小沢健二の「ラブリー」、そしてエレファントカシマシの「今宵月のように」をカバーすることがニュースになった日の僕のtwitterのタイムラインはそりゃあひどかったです。大体は「曲を冒涜する」的な批判が多かったと思います。一番痛烈だったのはPVを観たあとの大根さんの批判です。


 「ラブリー」の浜田ブリトニーまんまのPVはその気持ちがわからないでも無いけど、アレンジ自体は意外としっかりしていると思いました。渋谷系ではなく新宿系と評した電気グルーヴ、ピエール瀧のセンスは流石です。

MIYEARNZZ LABO - 大根仁 倖田來未「ラブリー」PVを『久々の大惨事』と評する
瀧「どっちかっていうと、新宿系ですもんね」

 ただその時、僕は倖田來未への批判ムードは、結局エイベックスの売上戦略や倖田來未のファッションに対してのものだったのではないかと思います。倖田來未への批判は結局AKB48に対する批判と同じもので、個人的には音楽的に楽ければそれでいいので。「ラブリー」と「ピンクスパイダー」のカバー音源を聴いてからは、想像していたものよりもずっと完成度が高いと思いました。PVはこんなだけど。

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 そんな渦中の最中、hideの「ピンクスパイダー」の方のカバーついてはX JAPAN関連の情報収拾でおなじみのブログ「X JAPAN EXPERIENCE」では肯定的なコメントが書いてありました。

X JAPAN EXPERIENCE - hide × ピンクスパイダー × 倖田來未
あれ…思っていたよりもかっこいい…。
個人的には「あり」かな(笑)
誰がアレンジしているんだろうか。

そもそも自分は「hide TRIBUTE SPIRITS」が全然ダメダメで…。
まあ…あえてあげないですけど、9割ぐらいがダメでしたね(汗)
というわけで、ほとんど聞いたことないのですが、
逆にここまで変えてくれたほうがかっこいいと感じました。

 そうそう、そうなんですよ!!hideの「ピンクスパイダー」はRIZEが原曲寄りの素晴らしいカバーを披露しているので忘れられがちですけど、『hide TRIBUTE SPIRITS』は目も当てられないほどひどかったですね。自分もリアルタイムで「ピンクスパイダー」や「ever free」にハマって、その流れで買った『hide TRIBUTE SPIRITS』のショックが大きすぎてアルバムごと誰かにあげちゃったのを覚えてます。あと「hide memorial summit」でのX JAPANやDJ OZMAの失笑もののカバーに比べたら、倖田來未のカバーはずっと完成度が高いです。

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 ナタリーのインタビューでは「ピンクスパイダー」のアレンジについてロックの要素をあえて落としたことが語られています。

ナタリー - [Power Push] 倖田來未「Color The Cover」インタビュー
もとの楽曲自体が圧倒的な存在感を持っているので、それをいい意味で壊しつつ、みんなに倖田來未バージョンもいいよねって認めてもらえるようなものを作りたいと思って。それでもう20パターン以上アレンジ考えて、ロック×ポップス、ロック×デジタル。ああでもないこうでもないっていろいろやってみたんです。

でも結局ロック要素が残ると「やっぱり原曲のほうがいいよね」ってことになってしまう。それで一度はあきらめかけたんですけど、最後にロンドンのプロデューサーの方にお願いしてみたら、ああいうダブステップ色の強い音が上がってきて。これはカッコいい!ってなったんですよね。最初はロック要素を残しつつ、キャッチーなポップス風にしたり、もっとヘビーな感じにしてみたり。デジタルの音を足したり引いたり、生音主体にしてみたり、そんなことを延々試してたんですけど。

 Perfumeのかしゆかならまだしも、まさか倖田來未の口から「ダブステップ」という単語がでてくるとは思いませんでした。どうも僕はエイベックスのアーティストを過小評価していたみたいです。


 他に曲についてUAの「情熱」は官能的かつ豪華絢爛にアレンジされていて、最近のUAの上品なアレンジよりずっと良くて、個人的にはこのアルバムのベストだと思います。あとエレファントカシマシの「今宵月のように」や山崎まさよしの「One more time,One more chance」はオリジナルよりもクセが無い感じで聴きやすいです。米米CLUBの「Shake Hip!」と山本リンダの「どうにもとまらない」は倖田來未のイメージに合いそうだけど、エレクトロなアレンジなので評価が分かれそうです。今回、久宝留理子の「男」をはじめて知ったのですが、作曲はSPEEDのプロデューサーで有名な伊秩弘将なんですね。原曲も聴いてみたのですが、倖田來未のカバーの方が完成度が高くて聴きやすいです。ボーナストラックの美空ひばりの「歌は我が命」はあまりに良くてひっくり返りました。凄いです。似合い過ぎです。

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 あくまで自分はですが、カバーアルバムの楽しみは「原曲を知らない」ことにもあると思います。僕は福山雅治のカバーアルバム『The Golden Oldies』やMr.Children、桜井和寿のBank Bandのカバーアルバム『沿志奏逢』、それから桑田佳祐がカバー曲のみ構成する「Act Against AIDS」のライブを好んで観ていたこともあるのですが、知らない曲ほど先入観無しに聴けます。もちろん原曲が好きな人にとっては「曲を冒涜した」と捉える人もいるだろうし、それはそれであれこれ言い合うのも楽しいです。でもすばらしい曲は歌い手やアレンジを選ばないと思うので、無闇に嫌っても勿体ないと思います。

 自分は倖田來未の音楽に関しては好きな曲が「恋しくて」と「WIND」の2曲しかない中途半端なリスナーですが、このアルバムは楽しかったです。ファンになりそうです。(★7.2)