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ホーリー・ファイア

 Foals。
 本当にこの腹持ちならない高学歴UKバンドが好きになってしまいました。これは偏見ですがアルバムに『Total Life Forever』とか『Holy Fire』というタイトルを付けるのは、敬虔なキリスト教徒か文学オタクと相場が決まってます。音楽的にはギターで複雑なリズムを刻む緻密さが特徴的です。ジャンル的にはIndie rock、Math Rockに属するとのことですが、事実上ジャンルの定義を成していないIndie rockは無視して、ロックにMath(数学)という言葉がつく当たりが高学歴で嫌な感じがします。ちなみに英語のWikipediaのページを見るとZAZEN BOYSもMath rockに属するらしいですが、こちらは全然学歴とは程遠いイメージですね。向井氏は文学オタですし。

 でも困ったことに新作は最高なのです。「My Number」を聴いて一気に好きになってしまいました。さらに困ったことに音源だけを聴いて好きになったのではなくPVを見て好きなりました。おそらく音源だけでは相変わらずスルーしたままだったと思います。そういうわかりにくいところも好きです。



 この夜のライブハウスにもかかわらず気怠い雰囲気がたまらなくいいです。この渋い、ポップさの欠片も無いロックを前にみんなが踊っている光景に酔いしれてしまいます。これが日本でバンドがZAZEN BOYSだとすれば、まあ確かに最近の「ポテトサラダ」のような曲をやれば渋い盛り上がりを見せるだろうけど、どうせみんな「半透明少女関係」のようなアッパーな盛り上がりを求めているんだろ?という暗黙の了解があるわけです。しかしFoalsの音楽には縦ノリの要素がないというか、安易に現実を消し去ろうとしない感じがいいです。このPVのように現実とライブハウス地続きに存在する音楽だと思います。

 そしてもちろん、痺れるような「inhaler」も最高です。



 この抑圧ロックバンドがここぞとばかりにはじけているのが最高です。もちろんそれがロボットダンスかよ!とツッコミましょう。彼らなりのはじけっぷりなのです。ストイックな高校受験を終えて大学に入り歓迎パーティで爆死する大学1年生のような爆発感があります。もちろん年相応に青臭さは消えているのですが(なにせYanisは26歳だし)、この曲のために今までひたすら自己を抑制してギターで緻密なリズムを刻んでいたのかと思わせるほどに解放していて、溜めに溜めたらスケール感やサイケ感さえ出ていて、「もう本当にフジロックのヘッドライナーにしてくれよ!」って感じです。今回で3回目なんだし、昼間に置いたら承知しねーぞ。知名度的に無理っぽいけど。

 アルバムは全体的に以前よりもエモーショナルに変化しているものの、基本的には以前同様ストイックかつインテリジェントなロックです。「Bad Habit」ではポストロック的な切なさをひたすらリズムを刻んでいるし、「Everytime」ではオルタナ的なエモさを出しながらひたすらリズムを刻んでいます。「Providence」では狂気に身を任せながら、やっぱりリズムを刻んでいます。「いつまで刻むんじゃ!」って思わないことも無いけど、以前よりもエモーショナルになりつつ、やっぱり抑制されたインテリクソ野郎バンド、それがFoalsなわけです。ファッキン・最高。(★7.7)


ホーリー・ファイアホーリー・ファイア
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