
sakanaction (初回生産限定盤CD+DVD)
とうとうsakanactionをはじめてしまいましたね。
今作は脱歌、脱ロックバンドがテーマのアルバムです。前作『Documenta』ロック、テクノ、アンビエント、ポストダブステップなど雑多なジャンルの音楽を取り入れながらサカナクション独自のサウンドを構築しつつ、しっかり歌を歌っていたのに対し、今作では特に後半になるにつれて歌の要素が削り取られています。山口一郎は普段から作詞については難産みたいですが、今回はそもそも作曲の段階であまり歌を必要としていない感じがします。インストの段階で充分成立している音楽に歌詞をつける野暮さがあったからこそ、後半になるにつれて歌詞が必要なくなったのかと。
だからわかりやすい今作のピークは3、4曲目の「ミュージック」と「夜の踊り子」までです。前作には「エンドレス」、その前には「目が明く藍色」、さらにその前には「ネイティブダンサー」のように、サカナクションのアルバムにはシングル曲に匹敵する曲が必ず新曲として収録されていました。今回は「INORI」がそれに匹敵する曲だと推測していたら、まさかの歌無しインスト曲です。アルバムには毎回あるインタールードをここに持ってきたのか!と驚くのも束の間、過去最高級に脂の乗り切ったシングル(アルバム用ミックスになってたのはいいですね)を2曲を続けて聴かされた時点でサカナクションの新作の主な聴き所は終了です。ここからはサカナクションではなく、sakanactionが徐々に姿を表します。
そもそもsakanationとは何なのかについて説明しますが、このことに関しては2008年の『NIGHT FISHING』の時点で山口一郎はsakanactionの野望について語っています。
HMV ONLINE - サカナクション 山口一郎『NIGHT FISHING』全曲解説!インタビュー
野望としては、カタカナでサカナクションという名前でやるときは歌モノをやり、英語表記で活動するときはインストで海外で活動するのが野望なんです。 将来的には。 メンバーみんながアンダーグラウンドな音楽を聴いているし、それを最終的にやりたいから、そのステップアップとしての今のサカナクションであったりするんですよね。 それに、メンバーそれぞれやりたいこともばらばらなので、いずれインストバンドをやるという野望を共有していないと続けていけないんですよね。なので、アルバムの中には必ず1曲はインストの曲を入れていかないとな、と。1stのときからそれは変わっていないですね。
要はカタカナ表記のサカナクションがロックバンドで、英語表記のsakanactionはインストバンドなのです。今作のタイトル『sakanaction』はバンドにおける別人格sakanactionが誕生したことを暗に示しています。
どの曲がサカナクションで、どの曲がsakanactionの曲なのかはリスナー個人の判断に任せますが、僕は「INORI」「映画」「mellow」「ストラクチャー」「朝の歌」の3曲はもう完全にsakanationの曲で、「なんてったって春」「アルデバラン」「M」「Aoi」「ボイル」の5曲はsakanactionとサカナクションの狭間のような曲だと思います。だから純粋にサカナクションといえる曲はシングルの「ミュージック」「夜の踊り子」「僕と花」の3曲だけです。
サカナクションとsakanactionが一つのアルバムに存在するのだから、当然バランスを欠いています。構成的にも滅茶苦茶です。部分的には気持ちいいけど、アルバムの統一感に関しては終わっているし、「夜の踊り子」目当てのリスナーは最初はつらい思いをするかと。というわけで次作は素直にsakanactionとしての作品を作って欲しいです。そしてそれに懲りてサカナクションとして帰ってきてくれるとうれしいです。あと過労死しそうで怖いので休んで欲しいです。聴いているこっちが不健康になりそうなアルバムでした。
でも「ボイル」は少し好きでしたよ。あと草刈愛美がリミックスしたらしい『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』は微妙だったので、気にならない方はダウンロード版を購入するのがベターだと思います。初回盤は値段高すぎですし。(★6.6)
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コメント
コメント一覧 (2)
(=´∀`)人(´∀`=)
わ、ありがとうございます!すごくうれしいです。少し批判的に書きましたけど。
サカナクション、働き過ぎなので心配です・・・