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 最初に名前を知ったのは2005年頃です。たしか銀杏BOYZの峯田和伸のブログで、カンパニー松尾監督の作品に使われている音楽が豊田道倫の曲だと書かれていて興味を持ちました。ただ当時は購入方法が通販のみで、視聴もレンタルも出来なかったから買いませんでした。カン松監督の作品は割と好きでよく観ていたのですが、クレジットが載ってないのでいまいち確証が持てませんでした。

 ようやくアルバムを聴けました。アルバムの予告映像で流れた「あいつのキス」が壮絶に良かったからすぐに注文しました。13年ぶりにリリースされたマイブラの新作よりも「これを求めていた!」感が強かったです。

 ところで話は少し逸れるけど、マイブラの『m b v』がリリースされたとき、豊田さんはこう呟いていました。


 この発言は当時twitterで噂された「マイブラの『mbv』はちゃんとミックスしてない」という噂に向けられたものなのですが、個人的には「場末で鳴らされる音の桃源郷」というのが本当に的確だなーと思いました。まったく同じことが『m t v』にも当てはまると思います。場末という言葉からは寂れた飲み屋やスナック、商店街、風俗店などを僕は想像してしまうのですが、そういう寂れたところやとかいいかげんさが、このアルバムにパッケージされている気がします。

 全体的に粗く、雑で、ラフすぎてまとまっていない感じもするのですが、時折はっとするような美しさを秘めた作品だと思います。他のアーティストならデモ集になりそうなラフな作りだし、音も籠っていて潤沢な予算の下で作られたものではないことが想像つくけれど、それを込みで豊田道倫っぽい気がします。

 実は「幻の水族館」「あいつのキス」以外の曲はあまりリピートしていないです。アルバムを通して聴くと飲んでもいないのに酔っぱらったみたいに視界が歪む気がするからです。怖いアルバムなんですけど、でも怖いもの見たさで今でも時折聴いています。聴くたびに変なアルバムだと思います。(★7.1)