
★10
風邪で参っていた時期、溜まったガリレオを消化していた時につくづく退屈だなーと思っていたわりに、それでも渡辺いっけいがおもしろすぎるから観ていた。ただ映画の方はまったく期待していなかった。つまりはガリレオ2ndシーズンは、誰がなんと言うと、吉高由里子が良くなかった。いや吉高由里子の演技云々ではなく、彼女の演じる岸谷美沙と泣かせに来る演出が最悪だった。特に「聖女の救済」における号泣シーンは、福山雅治とゲストの天海祐希のガチンコ対決に水を差す、フジテレビ制作ドラマの最も駄目な部分が出てしまっていた。
というわけで、映画を観る前のテンションは低かったです。ちなみに「ガリレオXX」の柴咲コウは、本妻だから良いんでしょ?とかそういう問題じゃなく良かったです。普通に良かった。
でも「真夏の方程式」は最高でした。ドラマの安っぽい作りがすべて伏線になっていると思えるほど。まさかフジテレビのドラマ映画で、レオス・カラックスの「ホーリーモーターズ」に匹敵する感動を得られるとは思わなかった。
映像が美しかった。瑠璃ヶ浦という架空の町は未だに昭和の古き街並が残されていて、湯川(福山雅治)はその旅館に泊まることになるのだけど、雰囲気がいい。全国どこにでもあるような旅館だけど、それが2013年の商業映画に登場すること自体が新鮮だった。ロビーには扇風機があり、大浴場があり、畳の食堂には木の仕切りがある。そして滞在している旅館経営者の親戚のガキがうるさい。田舎で過ごす夏休みっぽい。
そして日焼けした杏、そして彼女の水着姿がきれいだった。その土地に住み、海底資源の開発に反対する姿もよかった。福山はドラマのときよりも幾分歳を取っているように見えた。その結果、過剰にキャラクター性を持たされたドラマのクールな雰囲気が消え、一人の生身の人間として奥行きが出ていた。「容疑者Xの献身」は堤真一の作品だったけど、今回はまぎれも無い福山雅治の映画だった。
福山雅治本人の加齢の問題もあるから、ドラマシリーズはあと一シーズン出来るかどうか。ただ西谷弘と柳島克己が作る映画だけでも続けて欲しい。「サマーウォーズ」にはハマれなかったけど、それ以上に夏の記憶を刺激する映画で見つけてしまった。大傑作。
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