
★7
ずっと待たされていたHAIMの1stアルバム。本当に長かった。アルバムは予想通りだった。抜群に曲がよくて、インディーロックやシンセポップなどのジャンルが入り乱れながら、シーンとは一線を画すスケール感。大物の風格。だけどアルバムは本当に予想そのままだった。つまり僕は予想をはるかに超えたHAIMの1stアルバムを期待していたのだけど、「Forever」から「The Wire」までの4枚のシングルの印象を一気に覆すような新曲はなかった。シングル曲は最高だけど、特にリアレンジされること無く収録されていたのは残念。
アルバムを聴くうちに「どうしてこんなにナイーブなアルバムに仕上がったのか?」を考えた。彼女たちの性格はナイーヴとは程遠い(はず)。そんな天真爛漫な彼女たちが、例えば「The Wire」のようなアメリカンなロックっぽい曲を作ることはまだわかる。でもどう転んだら「Days Are Gone」のような曲を書いてしまうのか。それは彼女たちがR&Bが大好きだからだとと思う。最近のR&B界隈を眺めているとFrank OceanとかThe Weekendに行き着いて、さらに進むとJames Blakeに行き着く。もちろん彼女たちはインタビューでそういうのを聴いたなんて一言も言わないし、むしろTLCやDestiny's childが好きと話しているけど、その行き着く先が「Falling」や「Days Are Gone」のようなシンセポップなのだと思う。
アメリカのインディー界隈が、いくらR&Bやヒップホップの影響を受けていようと、旋律が異常に美しいVampire Weekendや病的なほどに上がるPassion Pitのようなバンドがいる。それを考えると両親がHAIM家3姉妹にサンタナやビリー・ジョエル、ジミヘン、オジー・オズボーン、ブラック・サバスを聴かせたことが今になって効いてくる。今、凡百のインディーバンドと一線を画すには、違うジャンルの血を強引に持ってこなければならない。「The Wire」はコテコテのアメリカンだったけど、「Forever」のような曲はR&Bとアメリカンロックがクロスオーバーする部分でしか生まれ得ない。
アルバムはシングルをまだ聴いてない人にとって間違いなく最高。どう考えてもアルバム本編に入れないのがおかしい「Edge」が収録されている日本盤を買ってもいいし、輸入盤を買ってiTunes Storeで単曲購入するのが良いかと。ただしシングルをすべて持っている人は視聴してから考えるべき。でも「Edge」は聴くべき。
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