
★7
二階堂和美には一貫したスタイルがない。ジャズをやるのかと思えばエレクトロをやったり、アングラを極めるかと思えば、大真面目にカバーアルバムを出したりする。若い音楽ファンの方を向いた歌い手になるのかと思えきや老人ホームで歌っていたりする。やたら土着的なアルバムも作る。それが評価されてブレイクするかと思ったら、子育てで活動ペースを落としたりする。そして高畑勲に見初められジブリの主題歌に抜擢されたりする。人が書いた歌も歌うし、自分で曲も書く。
定まっていない。だけど彼女はすごい歌を歌う。自由自在だ。
前半の『かぐや姫』パートが凄い。「あの山のむこう」や「歓喜」のようなリズムらしいリズムのない曲における声の伸びには鳥肌が立つ。そこからの「めざめの歌」「いのちの記憶」の流れはこのアルバムのハイライトだと思う。その後のカバーもおもしろい。原曲への思い入れがあるからアレンジに多少の文句はつけたくなるけど、最後の「はにゅうの宿」まで聴くと結局満足してしまう。やっぱり二階堂和美はおもしろい。まるで生き物みたいに変化する。これだけ歌が上手いのにさらに上手くなっている気がする。
今回のアルバム『ジブリと私とかぐや姫』のタイトルはよく出来ている。序盤は『かぐや姫』からインスパイアされた曲が並び、リアレンジされた彼女の曲、そしては『かぐや姫』の主題歌に繋がる。そしてジブリ関連のカバーが並ぶ。どこからでも楽しめるとも言えるけど統一感には欠ける。どこまでも二階堂和美らしい。
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