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★7

奥田民生、3年ぶりのソロアルバム。

わかるまで時間がかかったけど、本当に素晴らしいアルバムだった。今回もすべての楽器を自分で演奏した作品だけど、意外とあっさりしていた。実は視聴した段階でかなり良さげだったので購入したんだけど、その良さを時間できるまで1ヶ月近くかかった。今思えば視聴した時は「フリー」のもの凄いギターを聴いて一気にやられたんだけど、それは奥田民生の常套手段。この人いつもアルバムの最初はかますのね。だからいつも2曲目から脱力させられる。

でもその後打ち込みを使った「太陽の野郎」がずっと気になっていて、その後「息するように」と「ぼくら」にやられてこのアルバムが一気に好きになった。「息するように」はレコーディング漬けの日々をそのまま歌にしている。

手のなる方に 聞こえる方に 息するように 吸いこまれた
触れあうたびに 感じるたびに 息するように 引きこまれた

気になる方に まだ見ぬ方に 子供のように すぐはぐれた
笑えるごとに 泣いてるごとに うずまく海の 音をかなでた

実は似たようなことを3年前に「音のない音」で歌っている。

君と僕の日々を つなぐ 音をもっと
君と僕のあいだを およぐ 音をもっと
君の音と僕の音 話しかけるテンポ
表の音 裏の音 すきまの中の音

くりかえしの くりかえし 体をからめ重なる 妄想

本当にこの人はレコーディングオタクだと思う。岸田繁や桑田佳祐が泣いて喜びそうだ。

このようなごく個人的なアルバムをリリースできるのは、ユニコーンがヒット曲的な役割を担ってくれるからだと思う。ユニコーンで派手な曲をリリースし、ソロのライブでは敏腕のメンバーを揃えた最高の音楽を奏でる。その片隅で今ならSoundCloudやBandcampで公開して終わるような音楽を奥田民生は大手のレコード会社から大々的にリリースする。キャリアがなせる技だと思う。

ただ「さすらい」や「マシマロ」を期待する人はずっこけると思う。でも一度この良さを知ってしまったらヒット曲を歌う奥田民生さえどうでも良くなる。「イージュー★ライダー」を歌う奥田民生もかっこいいけど、今回収録された大傑作ナンバー「ぼくら」の良さにはかなわない。この曲のMVを作ればいいのに。

ああ、わからないぜ 道はまだ どれくらいで 明日まで どれくらいだ
まだまだわからないぜ 君と僕は どのくらいで 明日には どのくらいだ
言葉はひとことかふたことで いいくらいだ
悪くないぜ 手をつないで歩くよ

明日がわからないからこそ、ぼくらは日々を生きる。今日もがんばろう。


奥田民生「風は西から」