
★6
まつきあゆむは本来すごくロックなアーティストだと思う。
彼は当たり前に存在するものを新しい何かに変えてしまう人だ。2010年に話題になった『1億年レコード』は楽曲のエディット感がビートルズそのまんまだったし、当時USTREAMでゲリラ的に活動していた「ほうかご実験クラブ」をはじめとしたアートワークは糸井重里の『MOTHER2』のドット絵を丸パクリしていた。でもそれが新しかった。ただパクるだけでなくきとんと咀嚼した上で2010年の作品として仕上げていた。だから一部とはいえ熱狂を生み出すことができた。スティーヴ・ジョブズが既存のものを組み合わせてiPhoneを創りだしたように、彼は目の前にあるものをうまく作り変えることがロックの真髄だということを知っている。zipファイルで音源を直接販売することさえアートだった。
今回のEP『Enterkey.co.jp』では小沢健二を正々堂々とパクってる。表題曲「Enterkey.co.jp」を聴くと小沢健二の「ラブリー」が最初に頭に浮かぶ。でも懐しい印象はない。2014年の空気を纏ったロックとヒップホップが合わさったキラーチューンとして今に突き刺さる。
4曲目の「Revolutionary Beat」も「今夜はブギー・バック」をパクっているのだけどこれが凄い。まるでデビューしたての宇多田ヒカルがスチャダラパーと共演した時のような躍動感。2014年の幕開けにふさわしい。聴いていると滅茶苦茶アガる。
前に進むかどうかの問題じゃない
前に進もうとするその姿勢が見たい
それを教えてくれた君には胸を張りたい
風を切って街を歩きだす
Revolutionary Beat from Your Headphone!
前に進もうとするその姿勢が見たい
それを教えてくれた君には胸を張りたい
風を切って街を歩きだす
Revolutionary Beat from Your Headphone!
9年前に作られた「ヘッドフォンリスナーズサイクリングクラブ」を思わせるアツさ。こういうのをずっと待っていた。そして最後を飾る「ジュブナイル」はまつきあゆむなりの「All You Need Is Love」だと思う。泣けるよ。
いまだに細かい文句を付ける人がいるから一応書くけど、小沢健二の「ラブリー」や「今夜はブギー・バック」にもそれぞれ元ネタがある。つまり大事なのは今現在の音楽として魂が込められているかだ。上記の2曲はもちろん、今回のEPは全曲で今までで一番最高にまつきあゆむのアツい部分が出ている。
だから聴いているとテンションは上がるし、最高のお年玉をもらったなあと思った。まあ払ったのは俺だけど。でも1000円でこれだけいい気持ちになるのだから、やっぱりこれは最高のお年玉だよ。
まつきあゆむ「Revolutionary Beat」
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