僕はもともと村上春樹のファンで、彼の著作は8割程度は読んでいます。「ノルウェイの森」は結構好きな部類の作品で、これまでに3、4回読んでいます。登場人物も、ヒロインの直子を除けば好きなキャラばかりです。直子は性格的によくわからないのと、最後に死んでしまうからあまり好きではありませんでした。
作品に思い入れがあるから、映画を観るのを避けていました。公開当時にネガティブな感想を聞いていたことも影響しています。だけどこれはよくできた映画です。数点を除けばとても原作に忠実で、クォリティの高い作品だと思います。トラン・アン・ユン監督の作品ははじめて観たけど、他の作品も観たいと思うほど良かったです。でももし脚本を他の人が担当していれば、最後の場面も変わったはずだと思います。それぐらい原作ファンを怒らせる致命的な改変をしていました。ただそれ以外はすばらしかったです。直子の場面の森林や草原が病的に美しかったです。
ただどう考えてもこの映画は原作の読者向きです。人が何人も死に、トラウマになるくらい登場キャラが引き裂かれ、そしてAVよりも生々しい性描写がたびたび出てきます。自分は水原希子が観たくてこの作品を手に取ったのですが、確かに彼女はきれいで可愛らしかったけど、萌え要素は一切ありませんでした。そして彼女が演じる緑は、原作の中でとても素敵なキャラだけど、それを映像化するととんでもなくうざくなることがわかりました。役者の力量のせいではなく、だれがどう演じても緑を映像化するとかなりめんどくさい女になってしまうと思います。
それでも最後には水原希子の緑が好きになったし、菊池凛子の直子も良かったです。特に菊池凛子は凄かったです。これほどまでに可愛い菊池凛子が観れることに驚き、これほどまでに怖い菊池凛子が観れるのかと驚きっぱなしでした。<最初のプールの場面は当時20代後半とは思えないほど可愛らしい10代を演じていました。そして最後はトラウマになるほど怖かったです。それから松山ケンイチの作品を真面目に観たのはこの作品が最初なのですが、チラ見したときの「DEATH NOTE」のL役同様、良かったです。作品の中で顔がどんどん変わる俳優だと思いました。
玉山鉄二の永沢も良かったし、糸井重里、細野晴臣、高橋幸宏のカメオ出演にびっくりしたりと終止映像的には退屈しなかったけど、最後に登場するレイコの描写が残念でした。内田樹も同じことを書いていたけど、ワタナベくんとレイコさんの場面は原作だと楽しいお葬式なのに、暗く悲しい場面になっているのが残念でした。あと内田樹は2点ほど原作と変わっていた部分を指摘していたけど、それに関しても僕は100%同意です。
ただそれを含めてもこの映画はよくできています。ですが急いで観なければいけない類いの作品でもないので、原作ファンの方で観るのを躊躇している人は、本当に気が向いたら観る程度でいいと思います。ハードルが下がった時に観たら驚くはずです。原作のファンでない方にはお勧めできないけど、この作品をまるでPG12に止めたフジテレビ及び亀山千広は、映像化したスタッフよりも偉いと思います。どう考えてもヒット向きの映画じゃないので。
ちなみにamazonではDVDが988円で買えるみたいで、少し悩み中です。もう一度しっかり観たいわけではないけど、なんとなく。
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