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 このアルバムの詳細な説明についてはMUSICAの宇野維正さんのレビューを待ちましょう。絶対にオフィシャルよりも詳細でマニアックな原稿を書いてくれると思います。僕も楽しみです。

 そもそもマイブラの何が凄いのか、結論から言うと「よくわからない」ことが凄いと思います。

 よくわからないということは、現実の社会では困ったことになりますが、芸術活動全般においては悪いことではありません。「この作品はクソだ」「間違いなく最高傑作」と言われる作品は、「わかりやすさ」が優れているのは確かなのですが、僕たちはそれを理解した気になってしまえば作品に触れる理由がなくなってしまいます。「よくわからないから聴く」というのは、僕たちがその作品を理解する上での大きな動機になります。なぜ『Loveless』があれほど評価された作品なのか、それはあのノイズがかった轟音を評価する術を僕たちが持たなかったからだと思います。わからないからこそ畏怖し、それを理解しようと試みるのです。もちろん高品質であることが前提条件です。

 前作『Loveless』から21年もの間が空いてしまったことも、一度バンドを解散し再結成してまで新譜をリリースしたことの理由は僕にはわからないし、今回の『mbv』を聴いても一切わからないです。「アルバムを出す」と言っておきながら実際に本当にリリースされてしまって胸にぽっかりと穴があいたような気持ちなのですが、実際に音源を聴いているとますますわからなくなって胸の穴がさらに広がったような気がします。

 まるで1年くらいしかリリースが空いていないかのような瑞々しさがある一方で、アルバム後半の新機軸の曲を聴くと21年の重みを感じます。3曲目までは『Loveless』の頃のマイブラっぽくて、そこから先の曲でわけがわからなくなって、8、9曲目で壮絶なラストを迎えます。個人的にノイズが聴こえないのにマイブラとしか思えない「is this and yes」に衝撃を受けました。どこを聴いてもわからない音楽、それがMy Bloody Valentineなのだと思います。

 伝わりにくかったかもしれないけど、僕はこのアルバムは凄い作品だと思います。何度聴いても楽しいです!!

 あとこのアルバムは全ての曲のフル視聴音源がYouTubeで公開されています。とても粋な試みだと思います。(★9)