まず自分は一番音楽雑誌を読んでいた時期は「rockin'on」「ROCKIN'ON JAPAN」「MUSICA」「snoozer」「bridge」「ミュージックマガジン」を毎号購読し、「CUT」「SIGHT」を読んでいました。「音楽と人」も特集次第では買って読み、他の雑誌もいろいろ本屋で立ち読みしていました。時期としては2004年から2010年辺りです。それがここ2年ほどで全ての音楽雑誌を購読をやめるようになったことをたびたびtwitterで愚痴っていて、あるフォロワーの方からそのことを聞かれたので今回あらためて考えてみた次第です。
@pitti2210 初めまして。いつもtwitter・ブログ拝見しています。私は今、音楽雑誌のこれからについて考えています。そこで、以前pitti 2210さんが今は音楽雑誌を読まないというツイートを見たのですが、その理由について簡単にでも教えていただいてもいいですか?
— ゆうきさん (@ponntata2117) 2013年2月12日
それでいろいろ理由があったのでこうやって記事にまとめてみました。大きな理由としては3つあります。
1. レビューが退屈
自分が購読していたもののほとんどはロッキング・オン社関連の雑誌です。それ以外の会社から発行されているものでも大抵はロッキング・オン出身のライターの方が書いている媒体がほとんどで、他にはミュージックマガジンくらいしか残りません。そのような中で雑誌のレビューが相対的に力を失っていったのはネットの影響が大きいです。音楽雑誌のレビュー
雑誌のレビューには字数制限があり、基本的には絶賛/賞賛が大半になっているのが現状です。これは収益システムが広告に依存していることもあるけれど、日本という国において批評やジャーナリズムの文化が根付きにくいからだと思います。ジャーナリズムの精神が音楽メディアにおいて有効なのかはいまいちわからないけど、アメリカやヨーロッパのネット上の音楽メディアとの違いはわかりやすいです。例えばPitchforkもおそらく広告に依存した収益体制なのだろうけど、辛口な点数をつけたレビューを掲載しています。つまり広告主の存在が批評の妨げになっているという言い訳が通用する時代ではないのです。
それに元々日本の音楽雑誌は過度にレコード会社の広告に依存してきた面もあるのですが、雑誌がフェス事業を手掛けるようになったことも影響していると思います。「批評」より「紹介」に重心を置いた誌面作りに変化しているのだと思います。
ネットのレビュー
個人ブロガーの批評は音楽雑誌のものとは明確に違います。音楽雑誌はその分野に関するレビューを網羅しなければいけないのですが、個人ブロガーは好き勝手に選ぶことができます。それから広告に依存していないから賞賛だけではなく、貶す記事を書くこともブロガー次第です。自分は様々な個人ブログをRSSで購読しています。それからプロのライターの方のtwitterもフォローしているのですが、どうもtwitterだとぽろっと好きな作品のことを呟いていて、その情報が自分にとって有益なものだったりします。
それから気になる作品があったらまずGoogleのブログ検索とamazonのレビューをチェックします。amazonのカスタマーレビューに関しては、日本のレビューは海外と比較して質が低いらしいのですが、それでも「良い作品」「悪い作品」に関してはしっかり反映しているので、音楽雑誌のレビューと比較すると全然信頼度が高いです。
ちなみにネットメディアの批評に関しては、僕の知る限りele-kingとCOOKIE SCENEが手掛けていますが、あまり雑誌との違いがわかりません。字数制限が無いくらいしか今のところ感じません。
2. インタビュー記事がネットに出回るようになった
ナタリーやOTOTOY、excite music、ele-kingの影響が大きいです。「音楽雑誌ならではの切り口」をしている雑誌もいるのでしょうけど、それを言うなら「ライターならではの切り口」もあります。自分は渋谷陽一信者だったのですが、先日のROCKIN'ON JAPANにおける桑田佳祐インタビューも、字数と時間の制約もあるのでしょうが、桑田ファンから見て納得のいく記事ではありませんでした。
3. 情報が遅い
これも2と同様です。ナタリーが誕生して、雑誌を通してニュースを知ることはほとんど無くなりました。1〜3以外の理由で逆に音楽雑誌を読むとすれば連載コラムしかありません。今は気になる連載が「渋松対談」と「激刊!山崎」くらいしか無いのですが、これだけだと音楽雑誌をわざわざ買う理由にもならず、立ち読みで済ましてしまうし、最近だと立ち読みすらしなくなりました。
結論、音楽雑誌はどうなるのか
自分が音楽雑誌を買わなくなった一番大きな理由はネットの充実によるものです。ですが雑誌をめぐる情勢や役割もここ5年ほどで変わってきています。その変化に対して対応できていないのではないか?というのが正直なところです。まだまだ音楽メディアは必要だと思うけど、音楽雑誌は僕にとってもう必要なものではありません。ここからは想像ですが、おそらく洋楽ロック誌は今CD-BOXやアナログBOXを熱心に買う世代があと10年くらいはいるので、その後に大規模な再編成が進むと思います。何誌かが休刊、もしくは誌面縮小し、それに変わる洋楽のネットメディアが生まれると思います。邦楽ロック誌に関しては発行数が今どのくらいなのかはわかりませんが結構安定していそうなので、それに変わるネットメディアは生まれず、現在のROCKIN'ON JAPANとRO69の関係のように雑誌からネットへの転載が主流になると思います。そしていつか確実に少しずつ衰退していきます。
日本におけるPitchforkのようなネット上の批評メディアが生まれるかについてはブロガー周辺から誕生するしかないと思います。どう考えても既存の日本の音楽シーンからは生まれません。下にリストをつくりましたが、おそらくHi-Hi-Whoopeeさん
のような人が作るのではないかと。
最後に僕が購読している音楽を扱うブログのリストを上げておきます。
日々の音色とことば
RO69 - 中村明美の「ニューヨーク通信」
YUMECO RECORDS.
Sketches of Silence
.fatale
Mariko Sakamoto's Blog Transmissions from a pop life.
DAの今日何しましたか?
TAKUYAONLINE
club snoozer
曽我部恵一日記
DJ HOMERUN
レジーのブログ
Hi-Hi-Whoopee
GOLD SOUNDZ!
青春ゾンビ
K’s今日の1曲
宇宙 世田谷 emam
Devil's Own
X JAPAN EXPERIENCE
NOから始まる芸術論
キマグレ GOOD LIFE!
音楽哲学論考
コメント
コメント一覧 (5)
また、ここ2、3年ほど、ブログへの言及がはてブとか Twitter どまりで、ブログのコメント欄がほとんど機能していない状況に、何だか不健全な印象を抱いてまして。せっかく取り上げていただいたので、直接コメント欄に書くことにしました。
ところで、私もとんと近頃、音楽雑誌を読まなくなりました。読むのは『季刊 アルテス』程度です。理由としては、pitti さんの挙げられている項目が主です。が、「新人が表紙に取り上げられない」というのも、理由の1つではないかと考えてます。
音楽雑誌にくまなく目を通しているわけではないのですが、たとえば、『rockin'on』のここ1、2年の表紙って、ベテランかすでに解散してレジェンドになっているアーティストばかりで、「10年前か?」と錯覚してしまうほどです。『rockin'on』じゃなくて『大人のロック』でいいんじゃないか? と思ってしまいます。
購読する年齢層が上がっているから、そのニーズにこたえなければいけない、というのが要因だと思いますが、特集アーティストにもうちょい冒険がないと、「冒険しない負のスパイラル」みたいなものに陥って、どんどん「退屈」になってしまうんじゃないか、と。思うところです
pitti blog - 洋楽ロック誌で新人が表紙に取り上げられないことについて
http://pittiblog.ldblog.jp/archives/23853999.html
自分は以前、BURRN!やストレンジデイズなどを購読しておりました。
(両方とも批評性は日本としては高いものを持っていると思います。)
僕が離れたのも概ね、同じ理由ですが
やはりネットが発達して
自分で情報を持ってこれる・・・
もっと言えば、メディアが濾過する前の情報を持ってこれる
というのが大きいです。
「何故、その枠の中から選ばなければならないのだ」とふと、思うのですよね。
ただ音楽初心者のとっかかりとしてはこれからも重宝される存在だと思います。
守破離ってやつです。ありがとう、音楽雑誌!
追伸:我がブログにもごくたまにでいいので、お立ち寄りいただければうれしいです。
待っております。JPOP系は日曜日に更新中です。
(コメントする場所を間違えていました。
いいともの方に間違ってコメントした方は可能ならば削除お願いします)