
なんか昨日くらいからアクセス数が異常に増えて完全にビビっています。はてなで3人くらいからの方からブックマークされたときは呑気に「わーい」と喜んでいたのですが、人気エントリーの一番上に載ったのを見て背筋が凍りました。でもまあテレビ効果みたいなものだし、お越し下さった方々には感謝です。どうもありがとうございました。1%くらいは居着いてくれたらうれしいです。
それで柴那典さんから素敵なカウンターがあったのでまたいろいろ考えてしまいました。
最後のライターのリストにあげてもらってありがとうね。でも僕の実感では、いろんな媒体で書いてる原稿の中に「音楽専門誌だからこそ書ける批評的/批判的なレヴュー」という類のものもわりとあります。pittiblog.ldblog.jp/archives/23437…
— 柴那典さん (@shiba710) 2013年2月20日
たとえば今出てる『MUSICA』のcinema staffのレヴューとかはかなり辛口なことを書いたと思うけど、あれは対象への思い入れだけじゃなくて媒体への信頼がないと自分的には書けない類のものなので。
— 柴那典さん (@shiba710) 2013年2月20日
「さすが柴さん!」というか、あの記事に対する批判が今のところ見当たらない中、しっかりカウンターを入れていただけて感激です。そのcinema staffのレビューを読んだら本当に辛口のレビューが書かれていて正直驚きました。余計なお世話ですがこういう事態にならないことを願っています。
ですがやはり僕にとって相対的に音楽雑誌の必要性は低下しました。それは柴さんが毎月辛口レビューを書いても変わらないと思います。というわけで今回は新譜のリリースに際する約14年前と今のリスナー生活の違いについて書きます。
1999年7月15日
僕が中学生だった頃、大好きなバンドの新譜が発売された時、学校の帰り道で同級生の音楽好きの友達とその新譜について話しました。
ーーー今回、いいんじゃない?
「むしろだめだろ。シングルから印象変え過ぎじゃない?」
ーーーわからない?このギターの攻めの美学。ベストアルバムを出してから改心したんだよ。
「ベスト関係あんの?(笑)ベースがBilly Sheehanになってから全体的に音がハードすぎだし、少しペースも急ぎ過ぎじゃない?」
ーーーいやだからさあ、この音の硬さが新しいわけでしょ?
「その割に後半じめっとしてね?あと売れ線じゃないのにストリングス入れたりとか弱気だろ」
ーーーいやいやいや、売れ線じゃないのにストリングス入れるってお金なきゃ無理だろ(笑)こういうところで制作費をかけるのは、硬さの中の湿り気を出したかったんだよ。絶対に攻め曲。
「俺はまだそこまで達観できないな。もう少し聴き込まないと」
時は1999年7月、B'zの『Brotherhood』をめぐる僕と友人との会話です。ただの音楽好きの他愛のない会話です。そして僕は本屋さんに行って「WHAT'S IN?」を買い、佐伯明さんの記事を読んで「またべた褒めしているよ(笑)」と思いながら楽しく読みました。当時僕は「ROCKIN'ON JAPAN」も売っていない田舎にいました。僕の生活にはamazonもGoogleもありませんでした。でも全然楽しかったですよ。
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2013年2月3日
そして時は2013年、今まさにマイブラの新作が22年ぶりにリリースされようとしています。1. twitter
1月29日のKevin Shieldsが「アルバムはあと2、3日で出るかも」と言いました。それに関するライターの宇野維正さんのツイートです。マイブラ新曲やっとみーつけた!soundcloud.com/consequenceofs… …いいじゃん!でもネットではケヴィンのMC「アルバムはあと2、3日で出るかも」を真に受けてる人がいて「これがユトリか」と。んなもん出るわけねーじゃん。rough songという曲タイトルから推して知るべし
— uno koremasaさん (@uno_kore) 2013年1月29日
そして2013年2月3日、My Bloody Valentineが22年ぶりの新作『m b v』を発売しました。同様にそれに関するライターの宇野維正さんのツイートです。
「ケヴィンの言葉を信じるヤツはユトリ」とか言ってすいませんでした twitter.com/uno_kore/statu…
— uno koremasaさん (@uno_kore) 2013年2月3日
あとは、ブライアン・イーノが今度はどんなコメントを出すかに注目が集まるわけですが、あの有名な「MBVはポップの新しいスタンダードになるだろう」発言は、「LOVELESS」ではなく「soon」への賛辞だということが意外に忘れられがち #MBVあるある
— uno koremasaさん (@uno_kore) 2013年2月3日
「mbv」は今月のMUSICAにちゃんとしたレビューを書きますが、純粋なニューアルバムとして聴くといろいろ思うところあれど、未発表曲集として聴けば超最高。マジックは健在だけど、「Loveless」と比べるものではない
— uno koremasaさん (@uno_kore) 2013年2月4日
宇野さんがマイブラの過剰な思い入れをしていることは、2008年にマイブラがFUJI ROCK FESTIVALに出演する際に雑誌MUSICAで書いていた原稿を読んでいたので知っていました。その時も愛情がありすぎるゆえに悪口を書いていたのを覚えています。この日は他の様々な音楽ライターの方々もtwitterで呟いていました。
マイブラの件。なんとなく、日本公演に間に合わせるために無理やり完成を急いだ、という誰かの説が正しいような気がしてきましたw ラブレスやらラブレスリマスターの偏執狂的な追い込み方に比べて、あまりに仕上げがテキトーすぎる気がする。
— 小野島 大さん (@dai_onojima) 2013年2月3日
マイブラ新作、リハスタ借りてようやく服がビリビリ震えるくらいの音量で聴けた。うわーなにこれすげえいい。レベル低いモコモコしたマスタリングだから最近の音圧戦争に慣れた耳で聴くとショボく聴こえる人もいるだろうけど、逆にそのおかげでどれだけ音をデカくしても耳が痛くない。嬉しい。
— 柴那典さん (@shiba710) 2013年2月8日
他にもさまざまな方がtwitterで呟いていました。その日は一日お祭り騒ぎでした。
2. ネットメディア
ネットメディアではRO69にもいくつかブログの記事が投稿されました。ただ感想と言えるほど作品の中身には踏み込んでいません。今もRO69には『m b v』のディスクレビューは掲載されていません。ただRO69は雑誌rockin'onのディスクレビューを転載する形をとっているので、以降においても掲載されない可能性もあります。気になる方はこれからレビューが載るであろう雑誌を読みましょう。あとele-kingにもレビューが掲載されました。2013年2月3日 RO69 - 山崎洋一郎の激刊!編集長日記 - マイブラの新作、ゲット!
2013年2月8日 ele-king My Bloody Valentine - mbv
そしてこちらは海外に音楽メディアに掲載されたディスクレビューの一部です。
2013年2月4日 The Gurdian - My Bloody Valentine: m b v – review
2013年2月4日 BBC MUSIC - My Bloody Valentine m b v Review
2013年2月6日 Pitchfork Album Reviews - My Bloody Valentine: mbv
またさまざまな人がブログでレビューを書いていました。僕も凡庸な記事を一つ書きました。
2012年2月4日 山形浩生 の「経済のトリセツ」 - My Bloody Valentine 『mbv』: まったく変わってない……だがそれがいい!
2012年2月4日 pitti blog - My Bloody Valentineの『m b v』を聴いた
2012年2月6日 DJ ホームラン - マイ・ブラッディ・バレンタインの新作が出てしまった
3. リアルメディア
そしてアルバム発売から13日経って、日本の音楽雑誌にレビューが掲載されました。割と早かったと思います。2013年2月15日 MUSICA 2013年3月号 ディスクレビュー
レビュー記事は宇野維正さん、小野島大さん、柴那典さんの3人がそれぞれ書いています。ここでは引用しませんが、率直に言って上のツイートとほとんど同じことが書いてあります。ただそれに関してはオファーした編集部の責任だと思うし、雑誌の発売日を考えると時間がなかったはずなので、仕方ないことだと思います。
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このように僕はマイブラの新譜のリリースに際して、twitter上の感想を読み、ブログ検索でレビューを見つけて読み、そして海外のネットメディアの記事を読み、最後に国内の音楽雑誌のレビューを読みました。これから「rockin'on」に掲載されるものも楽しみにしています。その際気にしたことはネット、紙媒体を問わずおもしろいものが読みたいということです。そして信頼できる書き手がいればどんな媒体であろうとその人の記事を読みたいです。
信頼できるのは音楽雑誌ではなく、音楽好きの個人
音楽に関わる環境の変化をまとめるとこんな感じです。・1999年
リリース情報:音楽雑誌
視聴:(売れ線のみ)CDショップ
購入:CDショップ
批評:音楽雑誌の記事
・2013年
リリース情報:音楽雑誌、ナタリー
視聴:YouTube、iTunes Store、CDショップなど
購入:amazon、iTunes Store、CDショップ、個人サイトなど
批評:音楽雑誌、音楽ネットメディア、amazonのカスタマーレビュー、twitter、ブログなど
1999年と比べて音楽の情報・批評を得る経路は激増しました。僕のような無名のブロガーやtwitterの呟き、amazonの匿名レビューの影響力が少しずつだけど大きくなりました。もちろん依然として音楽雑誌は力を持っているし、雑誌でしか出来ない批評、記事もあると思います。ですが「好き/嫌い」「おもしろい/つまらない」に関して世界一辛辣な感想が掲載されてしまうのがネットの世界であり、twitterやamazonの感想&レビューです。そんな時代に雑誌の制約を受けた賞賛レビューだけが判断材料になるの?と思うのです。
僕が音楽雑誌を読まなくなったのは、ネットの充実も一つの理由ですが、プロ、アマ問わず信頼できる個人の音楽好きを見つけられたことが大きいです。僕はロッキング・オンを信頼するのではなく渋谷陽一を信頼しているのであり、雑誌MUSICAが好きなのではなく特定の書き手の方たちを信頼しているのです。そもそも僕が創刊してから50号まで買い続けたのは鹿野淳さんの批評が読みたかったからです。
というわけで僕は柴さんのブログを愛読してるけど、「媒体への信頼がないと自分的には書けない」辛口レビューって、編集部が矢面に立ってくれないと書けないってわけでないでしょ?ってツッコミを入れつつ、音楽雑誌もいいけど今はこんなにいろいろあるわけだから、自分なりに楽しもうよ!ってことです。
そんじゃーね!(※今回はちきりん風でお届けしました)
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