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★10

最高です。「マトリックス」を想像して食わず嫌いをしている方は今すぐ観に行きましょう。この映画は確かに入り組んだ構造をしていますが、難しい話ではありません。そして最高のヅラ映画です。というわけで、興行収入的には微妙なのでみんなで観に行きましょう。「アルゴ」の100倍はおもしろいので。

この映画は6つの物語が同時進行するグランドホテル形式の作品です。とりあえず「パルプフィクション」、もしくは「マグノリア」に似ています。ただこの作品の場合、時系列がそれぞれかけ離れています。基本的にエピソード同士にはほとんど繋がりはありません。しかしこれらのエピソードは主人公が「戦う」という点に関して共通しています。彼らはみな何かに対して戦うことを決めた人たちです。

これらの6つのエピソードを、キャストが1人につき複数の人が演じるのが今作の特徴です。例えばトム・ハンクスは最初のエピソードでは悪役、脇役、主人公の協力者など6つ全てのエピソードで何らかの形で参加しつつ、最後の未来のエピソードでは主人公を務めます。同様にハル・ベリー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジム・スタージェスも6つのエピソード全てに登場し、ジム・ブロードベントは5つ、ペ・ドゥナは4つに登場します。異なるエピソードでありながら同一のキャストで作られているのが大きな特徴です。

キャストも時代も登場人物も普通の映画の6倍でややこしすぎるだろ!?という声が聞こえてきそうですが、前述の通り、それぞれの時代がかけ離れているせいか、普通に見れます。もちろんハル・ベリーが全てのエピソードに登場した挙げ句、おまけに肌の色まで異なっているのですが、そのあたりはむしろ笑うところです。エピソード的には超真面目に演じているからこそ大袈裟なメイクやヅラで笑ってしまいます。特にトム・ハンクスは完全に詐欺ですね。主人公を務めていたときは男前すぎて誰だかわかりませんでした。

そして今作はこれらのエピソードの繋ぎ方が素晴らしいです。言葉を紡ぐように映像を繋いでいます。ヒップホップで韻を踏むように、この映画は場面と場面を切り替えることでリズムを生み出しています。そこが少し「マトリックス」的でした。場面の切り替えが生み出すスピード感が、観ている人を少しずつ煽っていって、本当に3時間近くまったく飽きること無く画面に見入ってしまいます。間違いなく傑作です。公開中にもう一度観に行きたいです。映画館で観るべき作品だと思います。