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★10

最高だった。今年最も幸せな時間だった。

今回はファンクラブ限定の浜離宮ホールで行われるもののライブビューイングでの鑑賞。先日の「党大会」のセットリストから大幅に曲を入れ変えていた。椎名林檎の人気を考えるとオーチャードホールを5日間やったところでみんなにチケットが行き渡るとは思えないけど、それでもチケットが一般発売された「党大会」のセットリストよりファンが喜ぶセットリストだったのは意外だった。

メンバーは斎藤ネコ(Violin)、グレート栄田(Violin)、山田雄司(Viola)、佐藤芳明(Accordion)、みどりん(Dr)、鳥越啓介(Contrabass)、朝川朋之(Harp)、林正樹(Piano)、そして「党大会」から一人代わって笠原あやの(Chello)という9人編成。今回、特に素晴らしかったのはドラムのSOIL&"PIMP"SESSIONSのみどりんだった。バンドのイメージからロック寄りの激しいジャズの演奏をすると思っていたのだけど、実際は静かなのにヒリヒリした演奏をしていた。SOILと椎名林檎のコラボ曲「MY FOOLISH HEART」は序盤のハイライトだった。そしてそこから矢継ぎ早に繰り出される「浴室」も最高だった。

その後、衣装替えのために一度舞台袖に捌けたけど、その間バンド全員で林檎の音声トラックに合わせて「熱愛発覚中」を演奏した。これがあまりに素晴らしすぎ悶え死にそうになった。音声との同期もスムーズすぎてびっくり。お願いだから是非とも次のアルバムに入れて下さい。ちなみにこの日は2度の衣装替えに加えてアンコールでも着替えていたから、計4着の衣装を披露していた。ライブビューイングだとそれをじっくり堪能できるのがうれしい。うっとりするほど美しいドレス姿や、まるで10代のような可憐な衣装の彼女の姿が見れた。さすがに「10代のよう」は無理があるけど、昔の歌を歌うと本当に顔が変わる。彼女は特別なのだと思う。

中盤にゲストとして谷口崇が登場して「becoming」と「ありあまる富」を演奏した。谷口崇の歌は初めて聴いた。正直に言うと、長く第一線で活躍できるタイプのシンガーではないと思った。少し高めの声でクセが強い歌い方。R&B的なシンガーのポジションには平井堅がいる。彼の音楽は淘汰される側にあるように思える。事実、彼のホームページを見るとこれから蕎麦屋に就職にすることが正直に綴られていた。でも音楽活動は続けていくようで、そのことについてもポジティブに捉えているように見えた。この事情に関係なく谷口崇の歌は素晴らしかった。この日の贅沢なバンドに合ってた。大きなビジネスとして音楽活動を続ける人と、他に仕事を持ちつつ音楽活動を続ける人、果たしてどちらかが幸せなのだろう。僕にはわからない。ただこの夜は二人共素晴らしかった。

後半は「錯乱」「罪と罰」「夢のあと」と名曲が続けざまに演奏された。「夢のあと」は息をつく間もないほど素晴らしかった。生きていてよかった。そこから先は本当にあっという間だった。アンコールではギターを片手に「歌舞伎町の女王」を歌い、真木よう子に提供した「幸先坂」で終演。1曲終わるごとの前傾姿勢のようなお辞儀をして、アンコールの最後ではマイクを床に置いてステージを去った。壮絶なまでにストイックなステージだった。


椎名林檎十五周年 班大会 平成二十五年浜離宮大会 2013年11月29日 セットリスト

1. 都合のいい身体
2. カーネーション
3. カリソメ乙女
4. MY FOOLISH HEART
5. 浴室
6. 熱愛発覚中
7. 茜さす 帰路照らされど...
8. becoming (with 谷口崇)
9. ありあまる富 (with 谷口崇)
10. いろはにほへと
11. 錯乱
12. 罪と罰
13. 夢のあと
14. 孤独のあかつき
15. 今
16. 月夜の肖像
17. おいしい季節
18. 旬
19. 女の子は誰でも

encore
20. 歌舞伎町の女王
21. 幸先坂