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生きることを願うのが罪
厳密にはこの解釈は間違っているのかもしれないけど、僕は今回の『かぐや姫の物語』を人の「生と死」についての話だと思った。言うまでもなく、かぐや姫が昇天することが死であり、地上で生きることが生である。いろいろ嫌なこともあったけど、かぐや姫は生きていたかった。しかし永遠に生きる人はいないのと同様に、かぐや姫もいつまでも地上で生きることはできない。つまりいつまでも「地上で生きたい」と願うことがかぐや姫の罪であり、「昇天する」ことが彼女にとっての罰なのだと思う。
その昇天の場面の描き方が壮絶だった。まるで結婚式のように祝福ムードに満ちた音楽でかぐや姫は迎えられた。神らしき何かの集団が人智を超えた力で彼女を迎え、そして紫色の衣を着せられることで彼女は心を失った。ひと思いに殺すのではなく心を奪う。これ以上残酷なことはない。しかし、ここは少し記憶が曖昧なのだけど、地上の歌が彼女に一筋の涙を流させる。心を失っても音楽は残る。悲しいのと同時にこれほど美しいシーンは無い。
絵はすべて素晴らしかった。特に捨丸とかぐや姫が飛び立つシーンは『風立ちぬ』の飛行の場面に並ぶ屈指の映像だと思う。二階堂和美の歌も素晴らしかった。しかしそれらの要素さえ、あの衝撃的な昇天の場面のインパクトには及ばない。あの場面の久石譲の音楽も凄かった。『竹取物語』があれほどの狂気を持っていたことに驚いた。
やはり高畑勲は凄い。あまりに凄すぎてこの映画も『火垂るの墓』と同様トラウマに近い思い出になった。あのラストが怖くてもう一度観に行けない。だからこの映画の興行収入は伸びないと思う。でもこの映画が完成するまでジブリを存続させた鈴木プロデューサーは偉い。ジブリは凄いところまで来たよ。宮﨑駿がまた何か作っちゃうよ。
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