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2013年に読んだマンガのランキングです。

暮れには少し早いけどまずはマンガのベストを選びました。マンガについては去年フェローズ(ハルタ)を読み始めたものの今年はそれ以上の開拓はしないで自分の好きそうな作品を手当たり読んだ感じです。あまり冒険しなくても面白い作品に出会えるのだから「コミックナタリー大賞」や「このマンガがすごい!」は結構大事だと思う。でもCDショップ大賞は大嫌いなのでさっさと無くなって欲しい。

ちなみにこれが去年のランキングです。

pitti blog - 2012 私的ベスト マンガ篇
1位 山田穣『がらくたストリート』
2位 入江亜季『乱と灰色の世界』
3位 森薫『乙嫁語り』
4位 八十八良『ウワガキ』
5位 森高夕次 × アダチケイジ『グラゼニ』
6位 松井優征『暗殺教室』
7位 森田崇『アバンチュリエ 新訳アルセーヌ・ルパン』
8位 鶴田謙二『フォゲットミーナット』
9位 井上純一『中国嫁日記』
10位 西尾維新×暁月あきら『めだかボックス』

というわけではじめます。

10位 えすとえむ『IPPO』

IPPO 1 (ヤングジャンプコミックス)

オーダーメイドの革靴を作る若き靴職人の物語です。全体的に静かな雰囲気の中で淡々と靴を作っている姿を見ていると癒やされます。ものづくりをする上でこの作品のような静けさを身に纏えることは素敵です。その憧れだけで形になったような作品だと思います。よしながふみの『きのう何食べた?』もそうだけど、こういうトーンを作るのは男性作家ではできないなあと(作者の性別は公開されてないけど)。ちなみに作者はBL出身で、いくらでも妄想の余地を残しているところに少し笑いました。

オーダーメイドの世界もあることをはじめて知りました。いつか自分も一生履きたくなるようなオーダーメイドの靴を作って貰いたいと思いました。女性キャラも登場しますが、そちらも魅力的です。


9位 さしみ『のび太の人類補完計画』

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『エヴァンゲリオン新劇』×『ドラえもん』の同人マンガです。テレビで『エヴァ旧劇』を観ていたのび太とドラえもんがもしもボックスを使い、のび太がエヴァのパイロットになるというSF話です。エヴァのキャラクターがドラえもん調の絵で描かれています。

結果的にこの作品は『エヴァンゲリオン』の構造を浮き出しにしました。つまりエヴァのシンジに代わってのび太がエヴァに乗り使徒を倒していくのですが、ことごとく楽天的な結果になるのね。このことはある一つの仮説を導きます。つまりはエヴァがああなるのはすべて庵野秀明のさじ加減なのではないかと。ちなみにこの話はオールハッピーエンドになります。でもそれが驚くほど自然なのです。これはエヴァに対する一つの解答だと思わせるほどの説得力を感じさせるところが凄いです。

8位 コースケ『GANGSTA.』

GANGSTA. 5 (BUNCH COMICS)

ギャング漫画です。まあこの分野には広江礼威という後期晩成型の天才がいるので、それと比べちゃいけないのですが、この人も絵がとても上手です。個人的にはすっごいきれいなお姉ちゃんが娼婦をやってたり、主人公がジゴロだったりする世界観が好きすぎて困ります。人は斬られまくるし銃で打たれまくるし、可愛い少女が看護婦やってたり、人種差別が題材だったりいろいろ詰まってるけど、社会的に終わってるアウトローの生活感が好きなので見ているのかも。

7位 ONE×村田雄介『ワンパンマン』

ワンパンマン 4 (ジャンプコミックス)

日本屈指の絵師でありながら最も残念なマンガ家・村田雄介の新作です。ONEがウェブで連載している『ワンパンマン』をリメイクし、集英社のマンガWEB「となりのヤングジャンプ」で連載しています。ONEの原作の方もおもしろいので迷ったけど今回はこちらを選びました。

個人的に村田雄介はすごく好きな作家です。だけどやっぱり少年漫画の範囲内で、井上雄彦で例えると『SLAM DUNK』で、小畑健でいうと『ヒカルの碁』なのです。僕は村田雄介が描く『バガボンド』や『DEATH NOTE』が読みたいのです。ただ絵がうまいマンガ家ではなく、世間の人が畏怖の念を抱くような評価をされてしかるべきマンガ家なはずなのに、そこまでいかないのが残念なのです。でも『ワンパンマン』はその扉をもしかしたら開けるかもしれない。誰よりも絵がうまいのに、その正当な評価をされない村田雄介の境遇は、『ワンパンマン』の主人公・サイタマの境遇と重ねて読みました。

6位 あらゐけいいち『日常』

日常 (8) (カドカワコミックス・エース)

このマンガ、8巻から化けてません?いや元々面白い作品だったことは間違いないけど、ちょっと8巻から飛び抜けておもしろい作品になった気がする。9巻も読んだけどやっぱりおもしろい。まあ詳しく検証していないのではっきりしたことはわからないけど。敢えて言うならボケを躊躇しなくなったというか。まあ元々躊躇しないマンガなんだけど。ああ、誰か代わりに説明してくれないかな。

5位 舞城王太郎×大暮維人『バイオーグ・トリニティ』

バイオーグ・トリニティ 2 (ヤングジャンプコミックス)

どこまでも作品を終わらせられないマンガ家・大暮維人VSどこまでも書いていられる小説家・舞城王太郎のコラボです。どちらの作者の作品も読んでいる人間からすると両者らしいSFだと思います。女の子がピュアで、男がめんどくさがりやで。そしてその世界のルールが残虐。救いがない。最後まで読むと胸糞悪い展開になる予感しかしないんですけど。次の巻が楽しみです。

4位 道満晴明『ぱら☆いぞ』

ぱらいぞ2 (ワニマガジンコミックススペシャル)

顎がはずれるくらい笑いました。1巻を読んだ時は、それ以前に作者が書いていた短篇集が好きだったせいかいまいち興味を惹かれなかったのだけど、今回は掴みから素晴らしかった。『あずまんが大王』のキャラをゲスト参加させてオナホ工場に行く様子は圧巻(ひどすぎる)。直接的にはエロを描いていないのだけど、本当にギリギリ。血を吐くほど笑いました。ちなみに最近は一般誌で連載中の『ニッケルオデオン』も『ヴォイニッチホテル』も最高でした。明らかに今年は道満晴明の一年だと思う。最近は休養してるらしいけど、ツイートは頻繁なのでいつも楽しみにしています。のんびり帰ってきて下さい。ちなみにエロ雑誌で書いていた『水爆』シリーズも成年指定はついていないし、成年向けとしての機能もあまり果たしていないので興味のある人は是非。

3位 吉田秋生『海街diary』

海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)

海辺の街で暮らす父を失った四姉妹の物語です。少女漫画なのですが、最初に読んだ時はモーニングあたりで連載されていてもおかしくないと思いました。知っている人からすれば「何を今更」なセレクトなのですが(「このマンガがすごい!2012」7位選出)、感情の細やかな描写が本当に凄いです。女の人はこれほどまでに現実的なのかと思い戦慄しました。全男子必読の漫画だと思います。いろいろ失った末の希望というか、強烈な現実感に胸焼けするというか。うう。

2位 岡本健太郎『山賊ダイアリー』

山賊ダイアリー(4) (イブニングKC)

猟師マンガです。男なら熱くなってしまうハンターマンガです。最近は『トリコ』とか『銀の匙』とか「命を食う」ことについて考えさせられる作品が少しずつ増えてきたけど、その中でも一番ゆるい作品だと思います。まじめに向き合うのではなく、ごく当たり前のように山の動物を食べる。そのための法律は守る。それでも大半の女性には嫌がられる。ある意味リアルなんだけど、それでもこのマンガがおもしろいのは、魅力的な永遠の少年がたくさん登場するからなのかなあと。

1位 大武政夫『ヒナまつり』

ヒナまつり 5 (ビームコミックス(ハルタ))

世間的には『坂本ですが?』がギャグ漫画界に旋風を巻き起こしている中、自分的に大ヒットだったのがこれです。超能力・中学生・ヤクザ・家族コメディです。女子中学生が生徒会長になるために弁護士に文章を作ってもらったり、女子中学生が父親にキャバクラに連れてってもらったりするマンガです。ギャグです。下ネタがないのにどうしてここまで笑える作品に仕上がるのか、本当に不思議。今年読んだマンガの中で圧倒的に一番面白かったです。


備忘録として他にも印象に残ったマンガを挙げておきます。

あずまきよひこ『よつばと 12巻』

ZSbHO

毎巻おもしろいのですが、最後の「今日は何して遊ぶ?」の破壊力ときたら。殺す気か。

井上雄彦『リアル』

REAL 13 (ヤングジャンプコミックス)

プロレスが観たくなりました。うまい人は何を書かせてもうまいんですね。

番外編:山本直樹『分校の人たち』

分校の人たち(1) (Fx COMICS)

間違いなくただのエロ漫画というか、それさえも行き着いてただのセックス漫画になってるんだけど、どうしてこれが成年指定にならず普通の本屋で売られているのだろう。芸術性?宗教性?なんだかわからないけど、高校生とかがこれを読んだら発狂する気がする。