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★10

銀杏BOYZ、9年ぶりの新作。

1

いろんな人たちの熱いレビューを読んでいると「俺なんかが書くことなんて残ってないなー」という気持ちになるのだけど、書かなければどうせ後悔することがわかっているので書いている。

とりあえず最初に説明してべきだと思うので書くけど、僕は銀杏BOYZの熱心なファンではない。もちろん過去の作品はシングル・アルバム共にほとんど聴いた。だけどそれ以前に青春パンクというジャンルが嫌いだったので、本格的に銀杏BOYZのことが気になりだしたのは『あいどんわなだい』以降だった。そして音源よりも峯田のブログの方が好きな中途半端なファンだった。

そんな人間だから、発売前は「配信でいいかなー」と思いながら迎えた発売日当日。残念ながら配信リリースはなかった。「それならレンタルまで待つかなー」と思っていたのだけど、続々と寄せられるネットにおける反響。耐え切れなくなって近所のTSUTAYAまで走り購入。

2

頭蓋骨にさえ響くようなノイズ。アルバムリリースが発表された時から各メディアで話題になっていたけど、僕が予想していた種類のノイズとは違った。マイブラのようなものを想像していた。それよりもずっと視覚的なノイズだった。例えば昔のブラウン管のテレビの「ザー」とか、アニメで悪いやつらが時空を飛び越えて現れるときのような演出と効果音、ああいうものに近い。砂嵐の先で銀杏BOYZの衝動が鳴り響く。ノイズはあくまで9年という歳月を超えて銀杏BOYZが今この時代にタイムトラベルしてきたことを高らかに告げる演出にすぎなかった。

そして初っ端から南沙織の「17才」を力強く歌う峯田が素晴らしい。シューゲイズ的なノイズは歌の輪郭をぼやかすように被せるけど、峯田はノイズさえ掻き消すような気迫で歌う。それがめちゃくちゃ格好良い。

3

このアルバムを聴いていると、僕の中の90年代が蘇える。「17才」や「愛の裂けめ」はロックというよりもむしろ歌謡に近いのだけど、それを日本で最初に形にしたのはTHE YELLOW MONKEYであり、吉井和哉であり、「天国旅行」だった。「I DON'T WANNA DIE FOREVER」のピコピコ音は00年代以降のエレクトロニカというより電気グルーヴの悪ノリが前に出たテクノ歌謡に近い。石野卓球も歌がうまい。そういうところも似ている。

またこのアルバムでは既発曲が全て録り直されている。普通なら良くて少しギターソロを変えたりボーカルを差し替えたりする程度なのに、このアルバムでは歌詞でさえ変えている。9年という歳月がそうさせたのかもしれないが、それにしてもサービスしすぎ。それに年末に発表された『BEACH』収録の「東京終曲」は既にMVの枠組みを超えた短編映画だったし、「ぽあだむ」のMVも手をかけすぎと言いたくなるほど作りこんでいる。サービスしすぎ。コスパ悪すぎ。

でもまあ、これはお祭りなのだと思う。そういうバブリーなところも90年代っぽい。

4

朝日新聞に掲載されたインタビューがおもしろい。

青春が終わったっていう気がしますね。普通の人では味わえないぐらい長く、青春を過ごせた。これからは音楽が始まるな、という気がしますね。やっと。

つまりようやく峯田は銀杏BOYZから解放されたのだ。銀杏BOYZは成長が許されないバンドであり、だからこそ彼らは2度目の1stアルバムを作るしかなかった。青春パンクを最小限にとどめ、ノイズや打ち込みを大胆に導入し、そして誰よりもロック歌謡を貫くことで銀杏BOYZは二度目の青春にたどり着くことが出来た。ただしその代償は大きく、他に代えることのできない4人中3人のメンバーを失い、バンドには峯田しか残らなかった。「青春が終わった。音楽が始まる」いい言葉だと思う。ようやく峯田は反省したのだ。と思いきや・・・

次のメンバーで集まって、修行して、合宿して。俺が今まで持ってきた銀杏BOYZの哲学と、4人から新しく生まれるアイデンティティーとを一つにして。できあがってる新曲があるので、それを録(と)って。で、シングルを出せたら、アルバムも出て、バーっとライブできるかな、と思うんですよね。

こいつ、全然懲りてない・・・。やはり天才か。

5

いろいろ書き殴ったけど、要は大傑作ってことです。年間ベスト1位どころか生涯の1枚になりそうな、超ド級のすさまじいレベルの傑作だと思う。もうこのアルバムを聴いたことで僕の2014年のリスナー生活の95%が満たされ、そして終わりを告げました。来月から2014年(Part2)ってことでみんなよろしくな!

銀杏BOYZ「ぽあだむ」

6

建前でも何でも無く、女の子って本当にかわいい生物だと心から思うけど、有無を言わさずその本音を叩き潰す長澤まさみ、やばすぎ。